La Distritofonica は南米コロンビアの首都ボゴタ (Bogota, Colombia) の音楽コレクティヴ/レーベルだ。 ニューヨーク (New York, NY, USA) のコロンビア系ミュージシャンのレーベル Chonta と交流がある (関連記事)、 地元の folk/roots な音楽に jazz/improv や electronica を融合させた 音楽を試みているミュージシャンの拠点だ。 中心となっているのは guitar 奏者の Alejandro Forero。
The Wire 誌 Issue 290 (April 2008) の "Global Ear" 欄で、 ポルトガル (Portugal) の "Pangeia instrumentos" (自作楽器) ミュージシャン Victor Gama が ボゴタの experimenta/alternative/underground シーンをレポートしている。 この記事でも La Distritofonica が大きく取り上げられている。 ニューヨークの Chonta との関係への言及が無いのは少々残念だが。
そんな La Distritofonica のリリースの中から4タイトルを入手済みなのだが、 いずれも興味深い内容だ。Chonta など他の都市のシーンとの繋がりもあり、 今後の展開への期待を込めて、4タイトル全てレビュー。 この4タイトルの後、Meridian Brothers の新作など4タイトルがリリースされている。 しかし、残念ながら未入手未聴だ。
Primero Mi Tía は La Distritofonica の 中心ミュージシャン Alejandro Ferero の参加しているグループの1つ。 結成時は5tet (g, sax/cl, b, ds, perc) だったが、 その後 accordion を加えた6tet編成で活動している。 また、saxophone/clarinet 奏者が入れ替わっている。 1st の Primero Mi Tía Quinteto で modal/free jazz 色濃く、folk/roots 的な面は marimba de chonta や cajón、pandeiro といった打楽器の 音色やリズムによるものが主だった。 しかし、2nd の Pingueria は、 accordion が加わったこともあり、 folk/roots 的な味わいが深まりぐっと面白くなっている。 まず聴くなら、Pingueria がお薦めだ。
Primero Mi Tía Quinteto では、 バルカン (Balkan) 風の "Yovano Yovanke" や、 変則リズムと electric guitar 使いが Brooklyn post-bop 風の "Tra Ico" も悪くない。 しかし、最も耳を捉えるのは marimba de chonta フィーチャーした曲。 オープニングの "Rio Arahás" も悪くないが、 それをより穏やかにミニマルにしたような "Oleaje" が良い。 しかし、punk 風の "Transmilenio" となるといささか脈略無さ過ぎだ。
Pingueria では、 オープニングの "Juanchito" から、folk percussion が先導する少々変則的なリズムに乗って メロディを弾く accordion と clarinet の絡みも良く、掴まれる。 緩急激しい展開とエッジのある音もテンション高い "Pingueria"、 marimba de chonta - bass - drums の trio による落ち着いた "Jugarreta"、 少しとぼけたような展開の "De Feria"、 mode jazz 的な展開に marimba de chonta が piano 的に絡む "Once Soles" なども気に入っている。
Asorubal は Alejandro Forero の参加しているもう一つのグループ、 3管に electric な guitar trio がリズム隊という6tetだ。 electric guitar trio の繰り出すヘビーで少々変則的なリズムに、 3管が folk/roots 的な brass band を思わせるフレーズを吹く展開が面白い。 もちろん free/post-bop jazz 的な展開 (1990年代の Tim Berne を少々思わせる) になる所もあるし、それも悪くない。
ちなみに、このアルバムの "Festina Lente" は、 Chonta レーベルがリリースしたコンピレーション Various Artists, Nueva Colombia: A New Generation Of Colombian Music (Chonta, CHON005, 2006, CD) (レビュー) にも収録されていた。
Meridian Brothers は Eblis Álvarez によるプロジェクトだ。 CDには演奏したミュージシャンのクレジットが無いのだが、 saxophone や tuba のような管楽器の音も聴こえ、 様々なミュージシャンと迎えて録音されているようだ。
sampling や loop によるダンスフロア向けではない緩いリズムの上に、 緩い管楽器のフレーズ、伝統的な打楽器の音や電子音、 少し調子外れの歌声などが、疎に添えられる。 Tied & Tickled Trio がコロンビアの folk を演奏したよう。 もしくは、Saska が中央アジアの folk でやったこと (レビュー) を、 コロンビアの folk で演ってみせたような音楽だ。 こういうアプローチの音楽が世界へ広がりを見せているようで、感慨深い。
La Distritofonica のサイトによると、以下の4名のグループという: Eblis Álvarez (guitar, electronica), Alejandro Forero (guitar, keyboards), Marío Galeano (bass, keyboards), Úrian Sarmiento (drums, electronica)。 しかし、CDでは saxophone 等の管楽器の音も聴こえるので、 ゲストを迎えたか、 El Advenimiento Del Castillo Mujer 録音当時は 異なるメンバーだった可能性が高い。