TFJ's Sidewalk Cafe > Cahiers des Disuqes >
Review: Fieldwork, Door; Vijay Iyer, Tragicomic; Wadada Leo Smith's Golden Quartet, Tabligh
2008/06/29
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(Pi Recordsing, PI26, 2008, CD)
1)Of 2)After Meaning 3)Less 4)Balanced 5)Bend 6)Cycle I 7)Pivot Point 8)Pivot Point Redux 9)Ghost Time 10)Cycle II 11)Rai
Producer: Fieldwork. Recorded 2007/12/21.
Vijay Iyer (piano), Steve Lehman (alto saxophone), Tyshawn Sorey (drums).

Fieldwork はニューヨーク (New York, NY, USA) を拠点に活動する jazz/improv の bass-less piano trio だ。 piano は1990年代後半に活動を始めた インド系アメリカ人 (Indian American) の Vijay Iyer。 saxophone は Anthony Braxton 12(+1)tet のメンバーとしても活動する Steve Lehman。 drums は、 前作 Simulated Progress (Pi Recordsing, PI16, 2005, CD) の Elliot Humberto Kavee から代わって、 Steve Lehman Quintet, On Meaning (Pi Recordsing, PI25, 2008, CD) でも活躍した Tyshawn Sorey になっている。 特に誰がリーダーというわけではなく、対等にコラボレーションしている trio だ。 (ちなみに、 Fieldwork, Simulated Progress の や Steve Lehman Quintet, On Meaningレビュー。)

Sorey の参加により、On Meaning で聴かれたような IDM的なギクシャクしたリズムが強化されると期待していたのだが、むしろ、その逆。 Simulated Progress と比べても 反覆感を強調するようなリズムは控えめで、 free jazz 的なニュアンスを強くしている。 Sorey 作曲の "Of" や "Pivot Point" など手数の多い1970s free jazz を思わせる所もあるし、 その一方で、"Cycle I" や "Cycle II" では Anthony Braxton を思わせるような ビート感の無い疎な展開も聴かせる。 もちろん、1970s free jazz 的なものをそのまま演っているのではなく、 つっかかるようなビート感が出る所などIDM風リズムの展開のようにも思われる。

一方、Steve Lehman 作の2曲 "After Meaning" と "Rai" を聴くと、 このようなIDM風なリズムの作風は Lehman の寄与大きいのだろうと思う。 といっても、 Vijay Iyer 作の "Less"、"Balanced" や "Ghost Time" の展開の中でも聴かれるし、 誰か1人だけの問題ではないと思うが。 自分が気に入ったのもこういう所、特に Lehman 作の2曲だ。

Simulated Progress のオープニング "Headlong" のようなぐっと掴まれるような曲が無く、 期待が大きかっただけに少々物足りない所もあるが、 1970s free jazz piano trio を同時代的に生き返られた佳作だ。

ちなみに、イギリス (UK) の音楽誌 The Wire は、Issue 293 (July 2008) の巻末のコーナー "Epiphanies" で、 Vijay Iyer がカルフォルニア (California, USA) 在住だった23歳のとき (1995年) に Cecil Tayler の orchestra に参加した時の体験を、Iyer 本人に書かせている。 これを読むと、Cecil Taylor と Andrew Hill に影響を受けたようだ。 ここでは書かれていなかったが、 Fieldwork の bass-less piano trio という編成も、 やはり、Cecil Taylor Trio を多分に意識したものなのかもしれない。

併せて、Vijay Iyer 関連の新録を簡単に紹介。

(Sunnyside, SSC1186, 2008, CD)
1)The Weight Of Things 2)Macaca Please 3)Aftermath 4)Comin' Up 5)Without Lions 6)Mehndi 6)Age Of Everything 7)Window Text 8)I'm All Smiles 9)Machine Days 10)Threnody 11)Becoming
Produced by Vijay Iyer. Recorded 2007/9/30, 2007/10/1.
Vijay Iyer (piano), Rudresh Mahanthappa (alto saxophone), Stephan Crump (bass), Marcus Gilmore (drums).

Vijay Iyer リーダーの bass 入り 4tet による、 Blood Sutra (Artist House, 2003)、 Reimagining (Savoy Jazz, 2005) に続く3作目だ。 bass 入りという編成もあるのか Fieldwork ほど free な展開にはならず、 かなり jazz のイデオムの強い作品だ。 それでも、"Age Of Everything" や圧倒的にアップテンポな "Macaca Please" で 変則的なリズムが生きている。こういう曲がもっと多ければとも思う。

Vijay Iyer と同じくインド系アメリカ人の saxophone 奏者 Rudresh Mahanthappa は、 リーダー作はいまいちなのだが、この Vijay Iyer 4tet での演奏は良い。 Amir ElSaffar, Two Rivers (Pi Recordings, PI24, 2007, CD) でも良かった。 名脇役的なミュージシャンなのかもしれない。

Wadada Leo Smith's Golden Quartet
(Cuneiform, RUNE270, 2008, CD)
1)Rosa Parks 2)DeJohnette 3)Caravan Of Winter 4)Tabligh
Recorded live at CalArts Creative Music Festival 2005.
Wadada Leo Smith (trumpet), Vijay Iyer (piano, Fender Rhodes, synthesizer), John Lindberg (bass), Shannon Jackson (drums).

シカゴ (Chicago, IL, USA) の AACM (Association for the Advancement of Creative Musicians) のメンバーでもあるベテラン trumpet 奏者 Wadada Leo Smith の2005年の録音は、Vijay Iyer の他、 String Trio Of New York で知られる bass 奏者の John Lindberg、 Ornette Coleman Prime Time 〜 The Decoding Society の drums 奏者 Ronald Shannon Jackson という豪華な顔ぶれだ。

1管 4tet 編成でミニマルに electric 時代の Miles Davis を再現するかのような演奏は悪くは無い。 しかし、この面子であれば、もう一捻りくらいできたろうに。 そう欲しかったように思う。