Сергей Старостин (Sergei Starostin) は ロシア (Россия / Russia) の folk/roots のミュージシャンだ。 伝統的なスタイルでなく、Farlanders では rock 的、 Moscow Art Trio では jazz 的な要素をベースとして、同時代的な試みを続けてきている。 そんな彼が folk/roots のミュージシャン Андрей Котов (Andrei Kotov)、 jazz/improv の文脈で活躍する Владимир Волков (Vladimir Volkov)、 underground な rock グループ Аукцыон を率いる Леонид Фёдоров (Leonid Fedorov) と組んだ4tetによるアルバムは、シンプルながら味わい深い folk/roots の佳作だ。
Starostin 作の曲が2曲、Kotov が曲を付けた歌が1曲あるが、収録曲のほとんどは伝承曲だ。 Kotov と Starostin の2人の歌声を中心に、 Kotov の колёсная лира (hurdy gurdy) や Starostin の калюка (kalyuka; Russian overtone flute) のような folk/roots 的な伝統楽器の音が添えられ、 Volkov の bass や Fedorov の guitar は少々控えめにそれらの演奏に合わせている。 synthesizer がクレジットされているが、目立った使い方はしていない。 rock や jazz のイデオムも控えめ。アコスティックな楽器の音色を生かした作品だ。
Kotov の hurdy gurdy の演奏は、 フランス (France) の Valentin Clastrier や Patrick Bouffard のような vielle à roue (hurdy gurdy) 奏者に比べると普通だ。 しかし、それでも最も印象に残るのは hurdy gurdy をフィーチャーした曲だ。 アップテンポな曲調に kalyuka の甲高いフレーズが hurdy gurdy の響と対比をなす “Заведу Я Компанью” も良いし、 ゆったりした展開の “О Человече” や “Отшельник” での hurdy gurdy の響きの淡々として霧がかかったかのような印象も気に入っている。
percussion のみを伴奏に Starostin の詠唱に男臭いコーラスが合わせる “А В Лугах” や Volkov の bass 弓弾きと Fedorov の guitar 爪弾きの微かな伴奏で Kotov と Starostin が詠唱する “Грешный Человече” も、最低限の伴奏に残響強めの歌声が立体的に感じられる。 この森の奧から響いてくるような雰囲気も良い。
Farlanders の女性歌手 Инна Желанная (Inna Zhelannaya) や Moscow Art Trio の brass 奏者 Аркадий Шилклопер (Arkady Shilkloper) が ゲスト参加してもしっくりハマりそうな内容だし、 彼らのようなゲストが参加したらもっと華やかで掴みのある作品になったのではないか、と思う。 しかし、このアルバムの少々男臭く淡々と地味な仕上がりも、聴く程に味わい深いものだ。
Leonid Fedorov と Vladimir Volkov の2人は、 Святослав Курашов (Slava Kulashov) との3人名義での Зимы Не Будет (Manchester File, CDMAN049, 2000, CD) 以来、継続的にアルバムをリリースしてきている。 2006年、2007年と Fedorov - Volkov duo で、 Красота (Улитка (Ulitka), U007, 2006, CD)、 Романсы (Улитка (Ulitka), U009, 2007, CD) とリリースしている。しかし、いずれのアルバムも少々捕え所が無かった。 Душеполезные Песни На Каждый День もこれらの作品に連なるものだが、ぐっと良くなったように思う。 このようなゲストを迎えての展開に期待したい。