Rudresh Mahanthappa はニューヨーク (New York) を拠点に jazz/improv の文脈で活動する saxophone 奏者だ。 インド系アメリカ人 (Indian Amarican) であり、 同じくインド系の piano 奏者 Vijay Iyer や、 イラク系の Amir ElSaffar のグループに参加している。 サイドメンとして中東やインドのモードをバリバリと吹く Mahanthappa を良いと思う一方、 リーダー作 Mother Tongue (Pi Recordings, PI14, 2004, CD) など聴いて物足りなくも感じていた。 しかし、去年末リリースしたリーダー作2作は Mahanthappa の魅力が良く出ている。 その Mahanthappa の魅力というのは、hard bop、mode 直系ともいえる jazz 的な saxophone の吹きっぷりだ。 alto ということで tenor ほどの重いブロウは無いが、 Indian fusion のような音とは一線を画している。

Kinsmen で共演している Kadri Gopalnath は 南インド・カルナータカ州の Dakshina Kannada (Karnataka, India) を拠点に活動しており、 Carnatic music を saxophone で演奏するミュージシャンという。 Avasarala Kanyakumari の violin の音色も L. Shankar を連想させられるものだ。 しかし、bass-drums のリズムはもちろん、 “Ganesha” や “Convergence (Kinsmen)” などでの2管の吹きっぷりは、しっかり jazz している。 mridangam の刻むリズムに saxophone と violin が Carnatic なフレーズを弾く冒頭から Abassi の guitar と Mahanthappa の saxophone による post-bop 的な展開に突入する “Shake!” も良い。

Apti は Kinsmen にも参加していた パキスタン系アメリカ人 (Pakistani American) の guitar 奏者 Raz Abbasi と、 jazz の drums 奏者でもある Dan Weiss による tabla による trio での録音だ。 インド風の要素といっても、こちらは、むしろ Hindustani music の色が濃いだろう。 編成から Zakir Hussain (tabla) が John McLaughlin (guitar) や Jan Garbarek (saxophone) と作った Making Music (ECM, ECM1349, 1987, CD) を連想されられるが、 これほどアトモスフェリックではない。 確かに、ゆったりした “Vandanaa Trayee” など、少々 Indian fusion っぽい所もある。 しかし、表題曲 “Apti” からして、saxophone と guitar がアップテンポのユニゾンで突っ込んでいく。 ラスト “You Talk Too Much” の展開もスリリングだ。

ちなみに、Rudresh Mahanthappa は、1990年前後の Anthony Braxton Quartet の リズム隊として知られる Mark Dresser (bass)、Gerry Hemingway (drums) と trio Mauger を組んでおり、昨年 The Beautiful Enabler (Clean Feed, CF114CD, 2008, CD) というアルバムをリリースしている。 こちらは、1曲 “Intone” くらいでしかインド色を感じさせない、 むしろ抽象的な展開もある post-free な jazz/improv だ。