TFJ's Sidewalk Cafe > Cahiers des Disuqes >
Review: Jay Clayton: The Peace Of Wild Things
2009/04/06
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(Sunnyside, SSC1198, 2008, CD)
1)Free Me 2)Why Because 3)Sometime 4)Let It Go 5)Love Is A Place 6)Sheila's Dream 7)Secrets Of Living 8)The Peace Of Wild Things 9)No Words, Only A Feeling
Recorded 2007/07-08. Produced by Jay Clayton and Jay Anderson.
Jay Clayton (solo voice with electronics).

Jay Clayton は1960年代からニューヨーク (New York, NY, USA) を拠点に活動する 女性ヴォーカリストだ。 主に free jazz の文脈で活動しており、 1980年前後に活動した free jazz 女性ヴォイスのスーパーグループ Vocal Summit へ参加していたこともある (メンバーは流動的だが、他に Jeanne Lee、Norma Winston、Lauren Newton、Urszula Dudziak などが参加)。 一方、Steve Reich Ensemble への参加など、現代音楽の文脈での活動もある。 そんな、彼女が久々に抽象的なヴォイシングがメインのアルバムをリリースした。 Jay Clayton / Jerry Granelli: Sound Songs (JMT, JMT 860 006, 1986, LP) [レビュー] や Quartett: No Secret (New Albion, NA017, 1988, CD) [レビュー] のような 1980年代の Jerry Granelli との一連の作品を思わせるような内容で、electronics 使いも含め相変わらず。 新展開を感じるわけではないが、衰えを感じさせない、澄んだ声からなる音空間が楽しめる作品だ。

内容は、抽象的なヴォイスに詩の朗読を交えたもの。 時折、電子楽器音も使われるが、最低限のものだ。 詩の朗読も、メロディアスに歌うわけではないが、抑揚や強弱をつけ声をのばしたり。 抽象的なヴォイスもその延長として自然に入り交じっている。 もちろん、リズムを感じるスキャット風の展開も無いわけではないが、 反覆を重ねていく所は、むしろ、Meredith Monk などに近いように感じる。 声を重ねているのだが、多重録音らしき所も、ライヴのループらしき所もある。 ハイトーンの詠唱の反覆を重ねていく “Somethimes”、 電子楽器音のミニマルな反覆を背景に、ハイトーンの詠唱と落ち着いた詩の朗読の対比させる “Free Me” のような曲が気に入っている。

Jerry Granelli、Anthony Cox らの4tet をバックにした2000年録音 Jay Clayton: Blooklyn 2000 (Sunnyside, SSC10969, 2001, CD) はスタンダード曲を歌ったもの。抽象的なヴォイスは止めてしまったのかな、と 思っていたので、この The Peace Of Wild Things のリリースは嬉しかった。 2006年になるが、Jay Clayton / Jane Ira Bloom / Jerry Granelli という面子で electronics を使ったライヴもしていたようだ [All About Jazz]。 今後も、このようなパフォーマンスの録音をリリースして欲しい。