Jewels & Binoculars は、 アメリカ出身ながらオランダ・アムステルダム (Amsterdam, NL) を拠点に ICP (Instant Composers Pool) や The Ex の界隈で活動する reed 奏者 Michael Moore と drums 奏者 Michael Vatcher、 ニューヨーク (New York, NY, USA) を拠点に活動する bass 奏者 Lindsey Horner という、 jazz/improv の文脈で活動する3人による Bob Dylan 曲集プロジェクトだ。 3人の関係は対等で、いずれがリーダーというわけではないという。 前2作は Moore のレーベル Ramboy からのリリースだったが、 2007年にリリースされたこの3作目は Horner のレーベル Upshot から。 リリースに気付くのに遅れてしまったが、 遅ればせながらレビュー。
飄々とした Moore の reeds に良く動き回る Horner の bass、 歌心も感じる Vetcher の drums と、3人の演奏は前2作とほぼ同様だ。 さすがに、3作目ともなると、内容に予想も付いてしまう所はある。 このグループの作品をまず一枚聴くとしたら、やはり、1作目 Jewels And Binoculars: The Music Of Bob Dylan (Ramboy, #15, 2001, CD) を薦めるだろう。 しかし、それでもまだ十分に聴き所はあった。
このアルバムでの注目は3曲で Bill Frisell がゲストとして参加していること。 Frisell はこのプロジェクトにぴったりはまっている。 特に、Moore にしては強い吹きっぷりで Frisell と絡む 疾走感のある展開の “It's Alright Ma (I'm Only Bleeding)” は、 このアルバムのベストトラックだろう。 ダウンテンポな “Blind Willie McTell” と “Gates Of Eden” では、 ソロと伴奏の別がはっきりし過ぎに感じるけれども。
その一方で、trio での演奏では、“I Believe In You” や “Jack-a-Roe” のようなゆったりとした曲が、耳を捉えた。 Jimmy Giuffre Trio にも似て、柔らかい bass や reeds の響きが気持ち良いというのもある。 しかし、それだけでなく、これらの曲の方が、reeds、bass、drums の三者が 伴奏に徹することなくそれぞれ Dylan を歌うという面白さが、よく現れているように感じるのだ。