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Review: Terje Isungset & Unni Løvlid (live) @ Tuki Miru Kimi Omou, Aoyama, Tokyo
2009/10/25
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
月見ル君想フ, 南青山
2009/10/24, 13:00-15:30
Terje Isungset (percussion, jew's harp, ram's horn, voice, etc), Unni Løvlid (voice, electronics), with guests: 巻上 公一 (theremin, jew's harp, voice), 中村 仁美 (篳篥 (hichiriki)).

氷を使った楽器の演奏で知られる Terje Isungset と folk/roots のグループ Rusk などで知られる歌手 Unni Løvlid、 という2人のノルウェー (Norway) のミュージシャンの来日ライブだ。 ライブは3部構成。最初に Terje Isungset のソロ、 続いて、Isungset にゲストの 巻上 と 中村 を加えてのトリオ、 最後に、Isungset & Løvlid のデュオだった。

Isungset は以前にもライブで観ており [レビュー]、 その時から大きく変わる演奏ではなかった。 鈴や木製の鳴りものをジャラジャラガラガラと鳴らしたり、 石をカンカン鳴らしたりシャリシャリと擦ったり、と、とりとめ無さげな演奏。 にも関わらず、落ち着いて聴かれるのは、 背景でゆっくり脈動するようなビートを bass drums が刻んでいるからだろうか。 巻上 と 中村 とのトリオでは、Isungset と 巻上 の口琴 (jew's harp) 合戦を楽しんだが、 中村の 篳篥 の音と 巻上の theremin の音色が被ってしまい 音の広がりが感じられなかったのが少々残念だった。

最後に Løvlid と Isungset のデュオ。 Løvlid は予め録音したコーラス部を再生しつつ、繊細ながら通る歌声で詠唱した。 folk/roots 的な曲調をベースとしているけれども、 コーラス部を含めハミングや息継ぎの音すらも生かしたかなり抽象的な歌唱だ。 そんな詠唱に、Isungset が鈴、木や石の鳴る音を効果的に使った伴奏を添え、 寒々とした針葉樹の森の中から女性の声が響いてくるような幻想的な音世界を作り出していた。 コーラス部はゆったり反復するものだったので、これを予め録音したものではなく、 ライブでループさせて作っていくことが出来たらもっと面白かったのではないだろうか。 しかし、このデュオだけで2時間くらいゆっくりたっぶり聴きたかった。

Isungset & Løvlid といえば、彼らに Frode Haltli を加えた3人が 中国贵州 (貴州, Guizhou) 省の南東部にある侗 (トン, Dong) 族の村を訪れて作成した Bridges (桥梁): Live In China (Heilo, HCD7201, 2005, CD) というアルバムがある [レビュー]。 日本でも Bridge のようなセッションが実現すれば、面白いだろうと思う。 今回のライブのゲストを見た時点で Bridge のようなセッションになることは無いだろう予想したし、 実際にそうだったけれども。 またの来日の機会に期待したい。