1908年から1942年にかけてロシア・アヴァンギャルドの作家たちが作った 音楽、詩、アジプロ等を集めたアンソロジーだ。 編纂したのは Facultad de Bellas Artes de Valencia の Miguel Molina Alarcón。 ロシア・アヴァンギャルドの音楽はあまりCD化されていないので、貴重なリリースだ。 確かに、現在の音楽に慣れた耳で聴くとそれほど刺激的なものではないだろう。 しかし、『ロシアの夢 1917-1937』のような展覧会 [レビュー] と併せて聴けば、 興味深く聴こえる所も多いだろう。
CD1は Miguel Molina Alarcón が2003年から2007年にかけて再現制作した音源で、音楽が中心。 街中で工場サイレンを使って演奏された Арсений Авраамов (Arseny Avraamov) の Гудковая симфония (Symphony of Sirens) (1922) のアゼルバイジャン・バクー (Baku) 版や、 Михаил Матюшин (Michail Matjuschin) 未来派のオペラ Победа над солнцем (Victory over the Sun) (『太陽の征服』, 1913) が聴き所だろう。 (ただし、Победа над солнцем は、 1996年にロシア国営放送 РТР (RTR) が再現制作した録音を収録している。)
CD2 は歴史的録音を集めたもので、音楽よりも詩の朗読や演説が多い。 それも、作家本人ながら1950-60sに録音したものも多い。 それでも、Ленин (Lenin) や Владимир Маяковский (Vladimir Mayakovsky) の声が収録されている。 音楽は1931年に Smithonian Folkways による Orchestre Symphonique de Paris の録音 Sounds Of New Music から2曲採られている。 その1曲、Александр Мосолов (Aleksandr Mosolov) 作曲の Завод, Музыка машин (Steel Foundry, Symphony Of Machine) (『鉄工場』, 1928) も、聴き所だろう。
全72頁のブックレットには英語による詳細な解説が載っている。 しかし、作品タイトルにロシア語キリル文字表記が一部で使われているものの、 人名のキリル文字表記は無し。この点は少々残念だ。