モスクワ市近代美術館 (Московский музей современного искусства; The Moscow Museum of Modern Art) 所蔵作品からなる1910-20年代のロシアのアヴァンギャルドの絵画の展覧会だ。 ロシアのアヴァンギャルドというと、映画の上映や デザイン・建築の展覧会はそれなりの頻度で開催されているが、 絵画はその関連資料として観ることはあっても、まとめて観る機会は意外となかった。 そういう意味ではありがたい展覧会だった。
最も楽しめたのは、 Казимир Малевич (Kazimir Malevich) や Эль Лисицкий (El Lissitzky) の作品を中心に据えた「マレーヴィチと抽象の展開」のコーナー。 Malevich の “Супрематизм (Suprematism)” はもちろん、 冬や農婦のモチーフの作品は好きだし、 Lissitzky の “Проун (Proun) ” も2点観ることができた。
しかし、Malevich や Lissitzky のような作風のものは全体の中では4分の1程度。 Нико Пиросмани (Niko Pirosmani) に特設コーナーがある程で、 むしろ、プリミティブな作風や Cubism の影響が強い絵画が過半だった。 そのような点は少々物足りなかったが、アヴァンギャルドといっても主流はこういう絵画だったのかもしれない。
基本的に油彩による絵画の展覧会だったのだが、 Александр Архипенко (Aleksandr Archipenko) によるブロンズ像が2点出ていた。 特に、モガな女性像を凹面を巧みに使って表現した “Standing Concave” (1925) が良かった。 胸までも凹面を使って表現する所に、拘りが感じられた。
ちなみに、会場内では、映画 Октябрь (October, 1927) や Аэлита (Aelita, 1924) がプロジェクタで上映され、 うらわ美術館所蔵のロシア・アヴァンギャルド関連本 Для Голоса (For The Voice, 1923) なども参考出展され、場の雰囲気を盛りあげていた。
ちなみに、今回の展覧会の作品を所蔵している モスクワ市近代美術館は、1999年に開館した新しい美術館だ。 公式サイトによる説明よると、 20世紀初頭のロシア・アヴァンギャルドの作品がコレクションの中核とのこと。 コレクションしている作品紹介ページ に載っている作品は、今回の展覧会で全て観ることができた。 どうやら、コレクションの核となっている作品が、一挙に来日していたようだ。