ケルン (Köln (Cologne), NRW, DE) とベルリン (Berlin, De) を拠点に活動する DJ/producer/keyboards 奏者 Burnt Friedman が主宰するレーベル Nonplace が、 設立10周年を記念したコンピレーションをリリースした。 レーベルの10年間の歩みを辿るような内容ではないが、 2000年代半ば以降のレーベルカラーとなった ダブワイズな electronica jazz の音源のリミックス・アルバムだ。 ここ数年の Nonplace の試みをよく捉えた内容になっている。

2曲目の Prof. Psygrooves を除き、 Nonplace 音源のリミックスか、関連ミュージシャンの未発表音源 (ミックス/バージョン違いなど)。 Burnt Friedman 自身はもちろん、 ベルリンの minimal/dub techno で知られる Basic Channel の片割れ Mark Ernestus と Nonplace のマスタリングを手掛けるエンジニア Rashad Becker (Basic Channel 傘下の Dubplates & Mastering に所属) が、 リミックスの多くを手掛けている。 リミックスといってもダンスフロア指向のものでなければ、流行の dubstep 等に接近したものでもない。 よりディープでダブワイズな音になっている。 音源に使われている Friedman & Liebezeit や Root 70 のリミックス前の音源も十分に良かったけれども、 生演奏をベースにしながらもディープで淡々とした音も面白い。

ここ数年の Nonplace レーベルにおける jazz/improv 人脈のキーマンが、 ニュージーランド出身ながらケルンを拠点に活動する saxophone 奏者 Hayden Chisholm だ。 Nonplace 10th Anniversary Edition の大半の録音に Chisholm は参加している。 そんな Chisholm の率いるグループが The Embassadors だ。 前作 The Embassadors feat. Michel Ongaru: Healing The Music (Nonplace, NON25, 2008, CD) は少々残念な出来だったが、 去年リリースされたこの Coptic Dub では dubwise な contemporary jazz が楽しめる。

Chisholm はもちろん Matt Penman - Jochen Rückert のリズム隊も Root 70 と同じ。 trombone の Nils Wogram が参加せずワンホーンになった分だけ緊張感は減ったが、 Root 70: Herb Dub を緩くソフトにした続編とも言える。 優しく漂う saxophone のフレーズや遠くに響くような steeldrum の音を乗せた、 アコースティックな Penman のベースの響きが引っ張るゆったりしたグルーヴが気に入っている。