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Review: Nina Becker: Azul; Nina Becker: Vermelho
2011/11/24
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Nina Becker
Azul
(yb music / Núcleo Contemporâneo, YBCD060, 2010, CD)
1)Ela Adora 2)Pedido 3)Samba Jambo 4)Dans Ton Ile 5)Lá e Cá 6)Não Tema 7)Não Me Diga Adeus 8)Janela 9)Flor Vermelha 10)Medo
Produzido por Maurício Tagliari, Carlos Eduardo Miranda e Nina Becker
Nina Becker (violão, voz, metalofones, celesta, moog), Maurício Tagliari (guitarra, moog, baixo), Gabriel Bubu (guitarra), Luca Raele (metalofones, rhodes, piano eléctrico), Ricardo Dias Gomes (baixo), Marcelo Callado (pratos, pequenas percussões), Gustavo Benjão (pequenas percussões), Roberto Gnattalli (arranjo de metais), Maria Carolina Cavalcanti (flauta em sol), Aquiles Moraes (flugelhorn), Everson Moraes (trombone), Bidu Cordeiro (trombone), Marlon Sette (trombone); Participações especiais: Moreno Veloso (cello), Nelson Jacobina (guitarra)

Nina Becker は Orquestra Imperial (Moreno - Domenico - Kassin らによるビックバンド) にフィーチャーされていたことでも知られる リオデジャネイロ (Rio de Janeiro, BR) の女性歌手。 その一方で、Romulo Fróes のアルバムへの参加など、サンパウロ (São Paulo, BR) のシーンとも縁が深い。 そんな彼女が去年リリースした、サンパウロ制作のアルバムだ。 確かに、Moreno Veloso がゲスト参加したり Domenico Lancellotti の曲を歌ったりと リオデジャネイロとのコネクションも感じさせる所はある。 しかし、音作りはむしろサンパウロのレーベル yb music (元 YBrazil?) のカラーが強く出ていて、 Maurício Tagliari と Luca Raele のグループ Nouvelle を連想させられる。 この2人だけをバックに歌った曲 (“Pedido” と “Não Me Diga Adeus”) など Nouvelle feat. Nina Becker のよう。

guitar や metalofones (鉄琴) による最低限の伴奏を背景に、 時に Becker 自身も弾きながら、呟く程ではないが少し力の抜けた艶かしい歌声で ゆったりした曲調の歌を聴かせる。 ポルトガル語の歌詞もあってかブラジル色もあるが、 US indies 界隈の女性シンガーソングライターに近いセンスも感じる。 そんな彼女の歌だけでも充分に良いのだが、このアルバムは録音というか音作りも気にいっている。 クリーンというより、ぼんやり広がるようなリヴァーヴを効かせたり、 割れたような歪みを時折僅かに感じさせたりする録音で、 音数の少なさもあって、音に自体に艶かしさを感じるようだ。

guitar の響きがさざ波のように広がる “Ela Adora”、 強く弾く guitar の音に緩い歌声がコントラストをなす “Samba-Jambo” も好きだが、 最も気に入ったのは沈み行くような哀愁と不穏さがいかにも Romulo Fróes 作らしい “Flor Vermelha” だ。

このアルバムは「青」はというタイトルだが、 同時にもう一枚、「赤」と題されたアルバムがリリースされている。

Nina Becker
Vermelho
(yb music / Núcleo Contemporâneo, YBCD059, 2010, CD)
1)Madrugada Branca 2)Toc Toc 3)Volte Sempre 4)Do Avesso 5)Lá e Cá 6)Janela 7)Superluxo 8)De um Amor em Paz 9)Lágrimas Negra 10)Tropical Poliéster
Produzido por Maurício Tagliari, Carlos Eduardo Miranda e Nina Becker
Nina Becker (voz, metalofones, moog), Gabriel Bubu (guitarra), Gustavo Benjão (guitarra), Marcelo Callado (bateria, pandeirola), Ricardo Dias Gomes (baixo); Gravações adicionais: Mauricio Tagliari (violão, moog), Luca Raele (piano)

この「赤」アルバムも「青」同様、サンパウロ制作。 しかし、こちらでは5人編成のバンドによるサウンドで rock 色濃い作品だ。 歌詞はポルトガル語だけれども、 Azul で感じられた US indies 界隈の女性SSW的なセンスをぐっと押し出している。 Becker の歌声も Azul ほどレイドバックはしておらず、 少々アップテンポな曲調もあってか、艶かしいというより可愛らしく感じる。 録音、音作りは Azul と同様だ。 自分の好みは Azul の方だが、 この Vermelho も悪くない。

ちなみに、この2枚のアルバムは、yb music と Núcleo Contemporâneo という 2つのサンパウロのレーベルの共同リリースという形を取っている。 いかにも yb music らしい作品だとは思うが、 jazz/choro を現代的にしたようなインストゥルメンタルがレーベルカラーの Núcleo Contemporâneo も名を連ねているのは、少々意外だ。