2000年前後の post-punk の再評価・リバイバルの中で、 1980年前後の post-punk の中でもfunk / hip hop の影響を感じるダンス指向のものを集めた コンピレーションが度々リリースされていた。 Various Artists: In The Beginning There Was Rhythm (Soul Jazz, SJR CD 57, 2001, CD) など、その中でも評判が良いものだった。 そういったコンピレーションに倣ったかのように それから数年遅れでリリースされたこの EMI の廉価コンピレーションは、 2004年当時のEMI傘のレーベル (EMI, Virgin, Charisma/Pre, United Artists, Mute, etc) の音源をを主に使って編纂されたもの。
レア物の目玉はやはり、2曲目の Steel Leg vs Electric Dread, “Hail Unlikely”。 この曲は、Public Image Ltd. の 1st Public Image (Virgin, 1978) と 2nd Metal Box (Virgin, 1978) の間にリリースされた Keith Levene & Jah Wobble のプロジェクト Steel Leg の唯一のリリースである Steel Leg vs Electric Dread (Virgin, VS239, 1978, 7″/12″) のB面1曲目 “Haile Unlikely” で、 Don Letts がヴォーカルとしてフィーチャーされている。 Public Image Ltd. より reggae 色濃いが、 “Swan Lake” としても知られる “Death Disco” からの繋ぎも自然だ。
それ以外も、Steel Leg 程はレアではないものの、 The Lounge Lizards と Ambitious Lovers の2曲を除きシングルの音源を収録しており、 メジャーからの廉価コンピレーションの割にはこだわりを感じる選曲だ。 NY勢から The Lounge Lizards と Ambitious Lovers を選んだり、 Rip Rig & Panic や 2 Tone のリリース (The Higsons) も交えているのも、面白い。 Buzzcocks, “Why Can't I Touch It?” も初めて聴くわけではないけど、 こういう文脈に置きうる音だったことに気付かされたり。興味深い内容だ。
ちなみに、選曲者のクレジットは無いが、ライナーノーツを書いているのは、 シェフィールドの post-punk グループ Clock DVA のメンバーにして 1980年代前半は同郷 Cabaret Voltaire でも準メンバー的存在だった Roger Quail。 メジャーの廉価コンピレーションだといって侮れない内容だ。
このコンピレーションを入手したのは2008年頃。 Happening Alive & Nasty: The EMI Punk Single Collection (Zonophone / EMI, 00946 380890 2 5, 2007, CD) や Nervous Tension: The EMI Post-Punk Collection (Zonophone / EMI, 50999 507429 2 9, 2007, CD) [レビュー] の他にも同様のリリースがあるのではないかと EMI の廉価コンピレーションをチェックする中で見付たのでした。 Steel Leg を収録していることに惹かれて買ったものの、結局、積聴状態になっていました。で、 Postmodernism: Style And Subversion In Sound And Vision 1970-90 (V&A / EMI, 50999 6 78115 2 6, 2011, 2CD+DVD[PAL/2]) [レビュー] 関連で思い出して聴いてみたら、 意外と良いではないですか。 そして、Roger Quail がコントリビュートしていることに気付いて納得したという。 メジャーが出す廉価コンピレーションは ヒット曲を集めただけとかの安易な作りのものが多いのは確かですが、 たまに良い企画のものもあるので、侮れません。