Влада Томова [Vlada Tomova] はブルガリア (България / Bulgaria) 出身ながら ニューヨーク (New York, US) を拠点に folk/roots の文脈で活動する女性歌手だ。 女声ポリフォニーのグループ Yasna Voices を率いる他、 ニューヨークのグループ Balkan Beat Box にゲスト歌手として参加もしている。 そんな彼女がプロジェクト Balkan Tales で2009年に制作したアルバムだ。 収録曲のほとんどはブルガリア民謡だが、 Alicia Svigal (The Klezmatics)、Uri Sharlin (Cardamon Quartet) や Avishai Cohen といったミュージシャンが参加していることからも判るよう、 ニューヨークの Balkan/Klezmer jazz らしくアレンジされている。 特にブルガリアのポリフォニーを思わせるような歌い方をしているわけではなく、 独特で個性的な音楽という程ではないが、 Matt Darriau Paradox Trio や Chris Speed の Pachora に近い感覚で楽しめるアルバムだ。

このアルバムは自主制作だが、配給しているのはニューヨークのレーベルではなく 1999年に活動を始めたブルガリアはソフィア (София, BG) のレーベル Kuker Music。 まだ10タイトル程度と年1タイトルに満たないリリース頻度だが、 ブルガリアの folk/roots を基調とした jazz/improv や world music を欧米のレーベルに見劣りしない プロダクション (録音、ジャケットデザイン、等) でリリースを続けている。 注目に値するレーベルだ。配給もプロモーションもあまりされていないのが残念だ。 このアルバムも約3年前のリリースだが、最近になってリリースに気付いて、遅ればせながら入手したものだ。 同時にリリースに気付いて入手したもう一タイトルも併せて紹介。

1990年代末から DJ Cooh 等の名義で活動するブルガリアのDJ/プロデューサ Иван Шопов [Ivan Shopov] の Бalkansky [Balkansky] 名義でのアルバム。 EBM 〜 hardcore から drum'n'bass を経て、最近は dubstep も作風に取入れているよう。 このアルバムは Kuker レーベルを主宰する Иво Христов [Ivo Christov] のコンセプトによるもので、 Kuker がリリースしているような folk/roots 的な音をフィーチャーした 重めの downtempo breakbeats だ。 半分近い5曲で Теодосий Спасов [Theodosii Spassov] の kaval をフィーチャーしており、 このアルバムを色を決めている。 伝統的な楽器のソロと breakbeats というのもありがちな組み合わせではあるが、悪くは無い。 ちなみに、Балкански Приказки の Влада Томова も1曲参加しているが、 ビートの無いフィールド録音を背景に呟くように歌っている。