1990年代半ばから活動する Iain Ballamy と Thomas Strønen を核とするグループ Food が Quiet Inlet (ECM, 2010) [レビュー] でフィーチャーした Nils Petter Molvær を伴って来日ツアーした。 その初日の公演では、前半は trio 編成で、 後半とアンコールでは 巻上 公一 を加えた quartet で演奏した。 基本的に Quiet Inlet で聴かれるような演奏だったが、 アルバムでの繊細さとは違う、ライブならではの力強さも感じたライブだった。
Strønen のプレイは以前に Humcrush で観ているのだが [レビュー]、 それよりも良く感じられた。チャカポコした軽い音が多いのは相変わらずだったが、 looper を巧みに使い、まるで手数の非常に多いドラミングをしているかのような音を作り出していく。 その音と手の動きのギャップも面白かったが、 次第に音が厚く強くなっていきグルーブを作りだしていくような音の組み立てが良かった。 現在の Food の鍵は Strønen だと感じた演奏だった。
一方の Ballamy は大人しめ。 特に、座って Lyricon を吹いたり electronics を弄っているときの音の存在感の無さは残念。 立ち上がって tenor/soprano saxophone でゆったりとしたメロディを吹くときはそうでもなかったので、 そういうプレイをもっと聴きたかった。 むしろ、一応ゲスト扱いの Molvær が正式メンバーと言っていいほど馴染んで目立った演奏を聴かせた。 effect を強く効かせた柔らかく浮遊するような trumpet を Strønen の作り出すビートの上にたなびかせるよう。 口に trumpet のベルをあてて遠くで聴こえるハミングのようなような音を作っていたのも印象的。 アルバムではほとんど聴かれない強く吹くときもあったのもライブならではか。
後半、巻上が絡んでどう音が変化するのか少々楽しみな所もあったのだが、 3人での音世界が完成度高いせいか、変化は感じられなかった (特に音が大きくなった展開の時など)。 初日ということで、まだ手探り状態だったのかもしれないが。
Quiet Inlet では Molvær 参加の曲よりも Christian Fennesz 参加曲の方を気に入っていたのだが、期待以上に楽しめた。 それだけに、Fennesz を加えてのライブも観てみたい。