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Review: L’Opéra National de Paris: Claude Debussy: Pelléas et Mélisande (video on demand)
2012/06/12
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)

日曜の夜、NHKオンデマンドで Robert Wilson 演出で話題のオペラを観ました。 twitter へ感想を連投したことですし、 それらをベースに備忘録を兼ねて感想をメモ。

Filmed live at L’Opéra Bastille, Paris in March 2012.
Direction musicale: Philippe Jordan.
Mise en scène et décors: Robert Wilson.
Orchestre et choeur de l'Opéra national de Paris.
NHK プレミアムシアター 2012-05-28 放送

単色光の照明と最低限の抽象的な美術を使った演出は、いかにも Robert Wilson [関連レビュー]。 もはや斬新という程でも無いでしょうが、こういう舞台はかなり好みです。 人物への照明を青のまま背景を緑や赤にする場面が、 第4幕終わり Golaud が Pelléas を殺すシーンではなくて、違う所で使われたのが、意外でした。 Mélisande の大きく裾を引きずる衣装も、このような照明とシルエットを駆使した舞台に合っていて良かったですし、 Pelléas と Mélisande だけ衣装の色が白っぽくて他が暗色だったというのも、その役を象徴しているよう。

第3幕頭の塔のシーンでの、塔の上の Mélisande と下の Pelléas の距離を置いた位置関係は、 二人の禁じられた関係を象徴しているよう。 また、第4幕の愛の告白のシーンでの Mélisande と Pelléas の一方を影にするかのようなライティングの切り替えも、 その物理的状況 (月明かりの下が木の下か) だけでなく、心理状況も反映しているかのようで絶妙。 なんだかんだいって、Pelléas と Mélisande の2人の場面が良くできていたと、感じました。

オペラはほとんど観て/聴いていなくて、 実は Claude Debussy の Pelléas et Mélisande は初めて聴いたのですが、 1902年初演のこのオペラの時点で、歌っぽい所 (アリア) が無くなっていたのだなあ、と。 歌うというより言葉の抑揚をデフォルメして曲にしたよう。 アリアでのど自慢するような所が無いオペラというのも、 Robert Wilson のような演出に合っていたのかもしれません。 そんな中で、第4幕、Mélisande に告られて Pelléas が舞い上がる所が歌っぽくなった所が 際立って、面白く感じられました。

以前に DVD で見たオペラ [関連レビュー] と比較すると、 演出はさておき音楽の部分だけみると、 Alban Berg: Wozzeck よりも Leoš Janáček: From The House Of The Dead に近い印象を受けたでしょうか。 (Pelléas et Mélisande の方が先の作品ですが。)

オペラやバレエは守備範囲外という感もあって情報収集を怠りがちなのですが、 こういうオペラであれば、たまに観に行くのも面白いだろうなあ、と。