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Review: Monolake: The Ghosts in Surround (live) @ UNIT, Daikankanyama, Tokyo
2012/09/09
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
UNIT, 代官山
2012/09/08, 20:00-21:30
Monolake [Robert Henke] (electronics), Tarik Barri (visuals).

1990年代に Chain Reaction レーベル下で活動を開始し、 自身のレーベル Imbalance Computer Music でリリースを続けている ベルリン (Berlin, DE) の minimal/dub techno の DJ/producer の来日ライブ。 期待していたサラウンドという面についてはその効果は少々物足りなかったが、 自宅のオーディオセットでは体感できない音響が楽しめた。

今年リリースされたアルバム Ghosts (Imbalance Computer Music, ML026, 2012) は dubstep の影響を強く感じる dub techno。 ambient に近いビート感を押し出さないトラックもあるので、 ライブではそういう面を使ってサラウンドな音作りを前面に出すかと期待していた。 しかし、実際は完全にダンスフロア指向のセットだった。 タイトル曲 “Ghosts” などアルバムからの曲もやっていたが、ほとんど別物だ。 耳で聴くというより、身体に響くという感じの重低音、 サラウンドということもあって空中にちりばめられたように聞こえる金属的な高音に包まれるという感は、さすが。 アップテンポな曲など dub step というより drum'n'bass に聴こえ、 こういう面もあったのか、と気付かされた。

その一方で、サラウンドという面では少々物足りなく感じた。 もともと身体で響きを感じるような低音部にサラウンド効果はあまり期待していなかったが、 高音部についても、疎に鳴っているうちはあちこちに音が舞うような感覚が楽しめるのだが、 ビートに乗って密に鳴るようになってくるとその効果が薄れ、 少々リバーブ深めに空間上で広く鳴っているように聴こえてしまう。 また、Robert Henke は特に打楽器を持ち込むわけではなく、 金属音のようなサンプリングしたと思われるものも使っているが、いわゆる電子音も多用。 音のテクスチャが鳴っている物体のイメージと繋がらないものは、 サラウンドにはあまり向いていないのかもしれない、と感じた。 そういう点でも、Vladislav Deley Quartet [レビュー] や、 (ライブは未体験だが) Moritz von Oswald Trio のような、 即興生演奏で物音・楽器音も用いるユニットの方がサラウンドが映えるのかもしれない。 しかし、ライブでの Monolake の自然体を観ていると、 自分が過剰にサラウンドに期待してしまっただけで、 ベルリンのシーンではサラウンドを使うのは特別なことではないのかもしれない、とも思った。

Monolake は全くの暗闇の中でのライブ “Live (Six channel surround sound concert in complete darkness)” というのもやっており、今回のライブの中でもそれに近いものも織り込んでくるかもしれないと期待していた。 しかし、VJの Tarik Barri を帯同していたこともあってか、それは無かった。 演奏するステージの後方スクリーンへの投影と、映像投影は特に立体感を意識したものではなかったが、 抽象的で色彩感を抑えた映像は Monolake の音には合っていた。

鳴らした音はそれなりにダンスフロアを意識したものだっが、 その客層やサラウンド期待もあってか、フロアで踊る人はほとんどいなかった。 こういう企画ならば、立席ではなく席のあるハコでもよかったのではないか、と。 あと、昔 Chain Reaction のイベント [レビュー] へ行ったときにも実感したのだけれど、こういう音は耳に優しい。 爆音で聴き続けたにもかかわらず、ライブが終った後に耳が遠くなることは無かった。