ドイツの electronica のミュージシャン Oval (aka Markus Popp) の 昨年前半にリリースしたブラジル・バイーア州サルバドール制作のアルバム Calidostópia! の「姉妹」アルバムが去年秋リリースされている。 Calidostópia! は無料のデジタル配信だったが、 Voa は限定アナログ盤及び有料のデジタル配信になっている。
フィーチャーしている歌の部分は Calidostópia! と同じセッションでの録音から 未発表の最上セレクションを用いているという。 classical な soprano で歌う Emilia Suto が外れ、 MBP/modern folklore に近い方向性がよりはっきりしている。 Markus Popp によるトラックも、 Calidostópia! では O の素材などが使われていたが、 Voa では新規素材を用いているという。 空間に疎に音を散りばめたような Calidostópia! に比べて、 持続的なテクスチャが増え音の層が厚めの展開も目立つ。 また、“Sediment” で聴かれるような断片化されていない guitar のアルペジオも新鮮だ。 間奏のように歌をフィーチャーしない曲が配されていることもあり、トラックの存在感は増している。
そんな guitar にはっきりとした歌い口もあって、 Agustín Albrieu をフィーチャーした “Sediment” が最も印象に残る曲だった。 Calidostópia! では男性歌手の印象が薄かったが、良いものもあったのだな、と気付かされた。 もちろん、女性歌手も良い。明るく沸き立つような電子音を背景に詠唱する “Mersey” や 控えめな電子音にループするコーラスのテクスチャも印象的な “Flageo” など、Aliace の歌声が特に印象に残った。
Calidostópia! から印象が大きく変わるわけではないが、 新しい方向性を感じさせる音作りもあり、 Calidostópia! のアウトテイク集とは違うアルバムに仕上がっている。
去年中にリリースに気付いていて聴いていたら Top Ten の選択もまた違っていたかもしれませんが。 まあ、仕方ありません。 CD/LP中心で新譜情報をチェックしていると、デジタル配信リリースを見落としがちだと、 反省することしきり。