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Review: Luzia von Wyl Ensemble: Frost
2015/03/01
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(hatOLOGY, 727, 2014, CD)
1)Tick-Tock 2)Frost 3)Joke 4)Wind 5)Jingle 6)Spark 7)Rush 8)Overlap 9)Kalimba 10)Quints
Recorded 2013/5/31,6/6,6/7,11/14.
Luzia von Wyl (piano), Amin Mokdad (flute), Nicola Katz (clarinet), Lukas Roos (bass clarinet), Maurus Conte (bassoon), Simon Heggendom (violin), Jonas Iten (violoncello), André Pousaz (bass), Raphael Christen (marimba), Rico Baumann (drums).

Luzia von Wyl はスイス出身、1985生まれの比較的若い作曲家/piano 奏者で、CDのリリースはこれが初めてのよう。 その彼女の率いるアンサンブルは classical と jazz をバックグラウンドに持つミュージシャンの混成だ。

ライナーノーツにある彼女の言葉によると、jazz の作曲では Maria Schneider、 そして Minimal Music では Steve Reich と Nik Bärtsch が好きとのこと。 確かに、ドラムがビートを刻む “Tick-Tock”、“Joke”、“Rush” や “Overlap” といった曲では、 それを伺わせるようなコンテンポラリーな jazz big band の演奏が楽しめる。 時折響く煌めくような piano の細かいフレーズなど Nik Bärtsch [レビュー] を思わせるし、 ミニマルな反復感を強調するところなどは、John Hollenbeck Large Ensemble [レビュー] なども連想させる。

一方で、“Wind” や “Jingle” のような反復感の無い疎な展開になるときに顕著だが、 violin や violoncello の使い方や、vibraphone ではなく marimba である所、 そして、管楽器が金管や saxophone ではなく、 clarinet や flute、そして jazz であまり使われず classic で使われることの多い bassoon をフィーチャーしている所など、 楽器の音色使いなどから classical の影響を強く感じる。 むしろ、このような面が、自分には新鮮に楽しめた作品だった。