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Review: Daniel Herskedal vs Keisuke Ohta (live) @ Pit Inn, Shinjuku, Tokyo
2016/09/04
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Daniel Herskedal vs 太田 惠資
新宿 Pit Inn
2016/09/02, 20:00-22:30
Daniel Herskedal (tuba, bass trumpet), Eyolf Dale (piano), Helge Andreas Norbakken (percussion), Daniel Wold (sound engineering); 太田 惠資 [Keisuke Ohta] (electric violin), 田中 徳崇 [Nori Tanaka] (drums).

Tronheim Jazz Orchestra 等、Norway の jazz/improv シーンで活動する tuba 奏者 Daniel Harskedal が Slow Eastbound Train (Edition Records, 2015) の trio で来日した。 自分が観た金曜の晩は、太田 惠資 とのダブルヘッドライナーで、前半が Daniel Hearskedal trio、 後半が 太田 惠資 - 田中 徳崇 duo、それぞれ約1時間だった。

Daniel Harskedal のトリオは、percussion と piano の音が強く、tuba や bass trumpet の繊細な音がかき消されがち。 せっかく専属の sound engineer を同伴していたのに、席を前に取り過ぎてスピーカーの音をちゃんと聴くことができなかったのは失敗。 それでも、後半の長めの tuba / bass trumpet のソロで、 マルチフォニックの倍音成分の多い音色や、高音の引きつった音色を楽しむことができた。 澄んだ丸い響きだけでなく、このような音色を多用することで、特に bass trumpet など、 Terje Isungset [鑑賞メモ] がよく使う ram's horn のよう。 かっちり作曲に基づく演奏で、Norway の folk のように感じられる時が多かったが、特に前半、オリエンタルな節回しを聴かせたのも印象に残った。

Wolf Valley や Albatrosh などのグループで活動する piano の Eyolf Dale も良かったが、 特に印象に残ったのは Helge Andreas Norbakken の percussion。 Mari Boine や Maria João のバックで知られる Norbakken だが、 bass drums や tom-tom のあるべき所に djembe を2台並べて床置きし、 cymbal の内側に自動車のホイールらしいものを2台、tom のように配置したセットを使い、口でもリズムを刻みつつ、 いかにも post-techno らしい細かい複雑なリズムを刻んでいたのが面白かった。

後半は、太田 惠資 - 田中 徳崇 の duo。こちらは即興でブレイクなし。 太田 は軽くエフェクトをかけつつ、あまり抽象的なフレージングはせずに、 時に欧州 folk の fiddle のように、時に中東の kemanche のように弾きまくり、 田中 がそれを煽るでもなく、時に脈動するかのように手数の密度を上げ、 時に一定に流れるように刻み、時間にメリハリを付けていた。 田中 の演奏は、八木 美知依 のグループ [鑑賞メモ] で聴いたことがあったが、 久しぶりに聴いてその良さを再確認。

Daniel Herskedal vs 太田 惠資 として聴きに行ったものの、 結果として、Helge Norbakken vs 田中 徳崇 として楽しんだ面が強かったライブだった。