TFJ's Sidewalk Cafe > Cahiers des Disuqes >
Review: Mats Eilertsen & Frode Haltli, Rainer Brüninghaus, et al in Jazztreffen 2016 (live) @ Goethe Institute Japan, Tokyo
2016/10/10
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Jazztreffen 2016
東京ドイツ文化センター
2016/10/10 15:00-22:00
Vilde&Inga, Monkey Plot, Sun Trio, Shalosh, Mats Eilertsen & Frode Haltli, Rainer Brüninghaus.

Jazztreffen は東京ドイツ文化センター主催のドイツおよびその近隣諸国のアーティストを招聘するジャズフェスティバル。 去年は日程が合わず Cyminology しか観に行かれなかった。今年のメインは10月8-10日の集中開催。 特に興味があったのはノルウェーのミュージシャン達だったが、いろいろ観る良い機会だろうと、最終日に丸一日観てきた。

2016/10/10 15:00-
Vilde Sandve Alnæs (violin), Inga Margrete Aas (doublebass).

2014年に Makrofauna (ECM, ECM2371, 2014, CD) をリリースしたノルウェーのデュオ。 アルバムでも聴かれるような、ボディをアルコで擦るなど特殊奏法を駆使した音響的な即興演奏を2曲ほど演奏した。 どちらも小柄な女性で、カジュアルな服装もあって子供っぽく見えるほどだったのは意外。 そんなこともあって、強面の音響の即興というよりも、ポロロンというピチカート音もお茶目に感じられる演奏に聴こえた。

2016/10/10 15:30-
Christian Skår Winther (acoustic guitar), Magnus Skavhaug Nergaard (doublebass), Jan Martin Gismervik (drums).

Hubro からアルバム2タイトルをリリースしている ノルウェーのアコースティックな jazz/improv のトリオ。 去年も来日していたが、ライブを観るのは今回が初めて。 今回は 阪東 妻三郎 主演のサイレントちゃんばら映画 『逆流』 (二川 文太郎 (dir.), 東亜キネマ等持院, 1924) を上映しながらの演奏だった。 ちゃんばら映画に合わせたのか、疾走感あるロック的なビート感を持った演奏で約20分。 それも、post-rock 的というより、1980sから活動していた Pell Mell などを思わせるインストゥルメンタルの alt rock のよう。 背景に映画を上映しているものの、映画の展開に合わせて曲調を変えることはなく、ほとんどBGV同様の扱いだった。 画面の小ささに演奏もあって、映画の世界に入れるどころか、逆に、映画の話が追えなくなってしまった。 『逆流』は名作『雄呂血』 [鑑賞メモ] の前年にほぼ同じスタッフで制作された映画。現存する数少ないサイレント時代の阪妻映画なので、 映画の世界に誘うような弁士・伴奏付きで見直したいものです。

2016/10/10 16:15-
Jorma Kalevi Louhivuori (aka J.K.L.) (trumpet, piano, electronics), Olavi Louhivuori (drums), Mikael Saastamoinen (bass).

2008年以降 CAM Jazz からアルバム4タイトルをリリースしているフィンランドのトリオ。 trumpet の音を looper, reverve 等 live electronics で加工しての、ある意味 “nu jazz” 的なライブだった。 しかし、ライブということもあるのかもしれないが、リズム隊が post-electronica の細かく刻むようなものではなく、 むしろ rock 的、fusion 的に感じる時が多かった。 Olavi Louhivuori は、Tomasz Stańko や Sussane Abbuehl、Mats Eilertsen のバンドのメンバーとして ECM のアルバムにも参加しており、 そこでのような繊細な演奏を期待したのだが、バンドのコンセプトが違ったようだ。

2016/10/10 17:30-
Gadi Stern (piano), David Michaeli (doublebass), Matan Assayag (drums).

2014年にデビューしたイスラエルを拠点に活動する piano trio。 手数を多めの強く華やかな piano の音を駆使し、時に rock マナーにラウドにリズムを刻む、 The Bad Plus などを連想させるトリオだった。 CDショップの売場構成からある程度は想像していたが、この日のラインナップの中で最も観客が多く、 piano trio の人気を見せ付けられたよう。

2016/10/10 19:15-
Mats Eilertsen (doublebass), Frode Haltli (accordion)

ECM、Hubro といったレーベルにリーダー作を残している他、2000年前後から多くのノルウェーの jazz/improv のアルバムに参加している2人によるデュオ。 共に以前の来日でライブも観たことがあるが、バンドのメンバーとしてではなくデュオのような形でじっくり演奏を聴くのは初めて。 スコアでテーマ等は決めていたようだが旋律を奏でるというより、特殊奏法も駆使して一つ一つの音のテクスチャを丁寧に聴かせていくよう。 そんな演奏の中から時折旋律が浮かび上がり、抽象的な音空間から抒情が湧き上がってくるよう。 あっというまの1時間弱で、このデュオのみの単独ライブを観たくなった。

予定では Håkon Kornstad Trio だったのだが、直前になって Håkon Kornstad が出演しないこととなり、残りの2人でのライブと変更となった。 Håkon Kornstad のライブも観たことがあるが [レビュー]、今回観られなかったのは残念。 この日の中でベストと思うほどデュオでの演奏は素晴らしかったが、それだけに Håkon Kornstad も加わってどうなっていたのだろう、とも思う。 その一方で、2人にとっても快心の演奏だったようで、 ライブの後、Haltli も「たぶん、再び Eilertsen でコンサートがあるだろう」とのこと。 このデュオでの活動が発展していくとこを期待したい。

2016/10/10 20:45-
Rainer Brüninghaus (piano)

リーダー作は多くないものの、 1970年代に Volker Kriegel や Eberhard Weber のグループのメンバーとして、 1988年以降は Jan Garbarek Group のメンバーとして活動を続ける ドイツの piano / keyboard 奏者 Rainer Brüninghaus のソロ。 さすがに、立ち振る舞いにも大物感があり、客の入りも Shalosh に次いで良かった。 Brüninghaus の参加したアルバムはいろいろ聴いてきているが、 録音も含めて piano のソロを聴くのは初めて。 最初は semi-classical な演奏でいかにもそれらしいと思ってたら、 時代にノリのいい ragtime 風の演奏になっり、そういうテイストもあったのかと気付かされた。 抒情的な展開からノリの良い演奏までメリハリもあり、サイレント映画の伴奏のようにストーリーが見えるようだった。 アンコールに2回応じるなど、60代後半という歳を感じさせない演奏だった。