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Review: Trygve Seim: Rumi Song
2016/12/25
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(ECM, ECM 2449, 2016, CD)
1)In Your Beauty 2)Seeing Double 3)Across The Doorsill 4)The Guest House 5)Leaving My Self 6)When I See Your Face 7)Like Every Other Day 8)The Drunk And The Madman 9)Whirling Rhythms 10)There Is Some Kiss We Want
Recorded February 2015.
Tora Augestad (vocal), Frode Haltli (accordion), Svante Henryson (violoncello), Trygve Seim (tenor and soprano saxophones).

Trygve Seim は1990年代から jazz/improv の文脈で活動するノルウェーの saxophone 奏者。 2000年代に入ってから Sinikka Langeland Ensemble のメンバーとして活動しており、 その演奏を聴いたことはあったが [レビュー]、リーダー作を聴くのは初めて。 このアルバムは女性歌手をフィーチャーしたプロジェクトで、 13世紀に活動したイスラーム神秘主義のペルシャ語詩人 Rumi の詩に曲を付けて歌うというもの。

Tora Augustad は初めて聴いたのだが、透明感あるハイトーンの中に少々可愛らしさも感じる歌声。 英訳された詩を歌っており、楽器演奏のところは別として、歌の旋律では中東のモードらしきものはほとんど使われていない。 音だけ聴いたら Rumi を歌っているとは気付き難いほど。 この意外な歌声だけで、ぐっと引き込まれてしまった。

アンサンブルも ECM らしい音の隙間を生かした演奏だ。 Trygve Seim の saxophone の音はソフトに時に中東の管楽器のように、 Svente Henryson の cello もアルコでゆったりと鳴らしている。 drums も bass も無い中で要となるのは Frode Haltli の accordion [関連レビュー]。 時に歌に寄り添うようにゆったりと、時にリズムを刻むように、落ち着いた多彩な演奏が楽しめた。