Trygve Seim は1990年代から jazz/improv の文脈で活動するノルウェーの saxophone 奏者。 2000年代に入ってから Sinikka Langeland Ensemble のメンバーとして活動しており、 その演奏を聴いたことはあったが [レビュー]、リーダー作を聴くのは初めて。 このアルバムは女性歌手をフィーチャーしたプロジェクトで、 13世紀に活動したイスラーム神秘主義のペルシャ語詩人 Rumi の詩に曲を付けて歌うというもの。
Tora Augustad は初めて聴いたのだが、透明感あるハイトーンの中に少々可愛らしさも感じる歌声。 英訳された詩を歌っており、楽器演奏のところは別として、歌の旋律では中東のモードらしきものはほとんど使われていない。 音だけ聴いたら Rumi を歌っているとは気付き難いほど。 この意外な歌声だけで、ぐっと引き込まれてしまった。
アンサンブルも ECM らしい音の隙間を生かした演奏だ。 Trygve Seim の saxophone の音はソフトに時に中東の管楽器のように、 Svente Henryson の cello もアルコでゆったりと鳴らしている。 drums も bass も無い中で要となるのは Frode Haltli の accordion [関連レビュー]。 時に歌に寄り添うようにゆったりと、時にリズムを刻むように、落ち着いた多彩な演奏が楽しめた。