共産政権時代から活動するスロヴァキアの folk/roots の歌手 Zuzana Homolová。 2012年にリリースした Ňet Vekšeho Rozkošu (Slnko, SZ 0048 2 331, 2012, CD) [レビュー] のトリオ Trojka Z.H. の1人、Miloš Železňák とのデュオ名義でのアルバムだ。 Ňet Vekšeho Rozkošu ほどフォーキーではないが、 Tvojej Duši Zahynúť Nedám (Slnko, SZ0017 2 332, 2005, CD) [レビュー] のようなビート感も抑えて、楽器音の響きと音の間合いを生かした、落ち着いたアルバムだ。
特にこのアルバムでは、ソフトな管楽器の響きが生きている。 吹きまくることなく、ソフトに歌に寄り添うように、鳴っている。 guitar も澄んだ響きのアルペジオだけでなく、緩くファズを効かせたり Bill Frisel のようにリバーブを効かせるときも。 また、guitar だけでなく bouzouki や banjo を使った曲でも、その音色でぐっと雰囲気が変わる。 jazz 的というほどではないのだが、シンプルな folk に収まら無いひっかかりが随所に仕込まれたアルバムだ。
合わせて、少し前のリリースになるけれども、最近入手できた関連盤を紹介。
Homolová と長年共演を続けている Miloš Železňák は jazz の文脈でも活動する guitar 奏者で、 やはりスロバキアのレーベルから Hevhetia から 4枚リーダー作をリリースしている。 Miloš Železňák Trio は特に folk 的要素を感じさせない power trio だが、 このソロ名義の Rusnácke [Ruthenian] は、 彼のルーツであるルテニア人 (Ruthenian; ハプスブルグ帝国領に住んでいたウクライナ人やベラルーシ人に近い民族) の民謡を演奏した作品。 歌詞カードは付いているが、多くは歌なしのインストゥルメンタルの演奏で、ほとんどが guitar ソロ。 曲に gajdy (いわゆる bagpipe) や soprano saxophone, clarinet も加わった曲もある。 民謡のメロディをモチーフに、Bill Frisell の影響も感じられるリバーブなどのエフェクトを控えめに効かせた guitar が楽しめるアルバムだ。