『映像と音楽』というシリーズの中の現代音楽のコンサート。 といっても、単純にBGVをバックにミュージシャンが演奏するようなものではない。 映像空間演出と謳っているように、スタンダートサイズやHDのビデオをフラットな壁に投影するのではなく、 上部だけとはいえキューブではなく一面が斜めになった壁三面に映像を投影していた。 また、音楽との組み合わせも、映像と生演奏の組み合わせだけでなく、 1、3曲目は録音源を用い、3曲目も映像無しだった。
「揺れるイメージ」と「フラジリティ」をテーマとしている作曲家ということで、 不安定にも感じる音程、テンポの曲だったが、ソロよりも小編成のアンサンブルや合唱の方が良かった。 特に『In the Dim Light』は、複数の楽器の織りなす音が協和していないけれども、 映像空間演出の助けもあってか自然な響き合いのように感じられたのが面白かった。 また、録音源を使った2回があったことで、演奏者の存在の大きさを実感。 演奏者の息遣い指使いを間近で感じられるような席では無かったが、 録音源では注意の向け先を失ってしまった感があった一方、 それでも生演奏の方が音への集中力がぐっと上がるように感じられた。
投影された映像は、具象的な森のイメージをテクスチャのように織り重ねて半ば抽象化したもの。 INAXギャラリー Gallery 2 でよく展示されていた具象のノイズ成分を使って抽象化したかのような絵画 [関連レビュー 1, 2] の映像インスタレーション版のよう。 音楽と付かず離れず邪魔しない映像だったが、色のアンビエンスのよう。 もう少し映像が主張する時があっても良かったかな、とも思った。