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Review: Arditti Quartet × Kenta Kojiri (concert) @ Kanagawa Prefectural Music Hall, Yokohama
2019/12/15
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Arditti Quartet × Kenta Kojiri
神奈川県立音楽堂
2019/11/30, 15:00-16:30.
Arditti Quartet: Irvine Arditti (1st violin), Ashot Sarkissjan (2nd violin), Ralf Ehlers (viola), Lucas Fels (violoncello).
小㞍 健太 [Kenta Kojiri] (choreography/dance).
1)西村 朗:弦楽四重奏曲 第6番〈朱雀〉 [Akira Nishimura: String Quartet No. 6 “Suzaku - The Vermilion Bird”] (2017)
2)細川 俊夫:パッサージュ(通り道)〜弦楽四重奏のための [Toshio Hosokawa: Passage for String Quartet] (2019)
3)Wolfgang Rihm: Geste zu Vedova [「Geste zu Vedova〜ヴェドヴァを讃えて」] (2015)
4)Wolfgang Rihm: String Quartet No. 3 “Im innersten” [弦楽四重奏曲 第3番〈胸裡〉]

特に欧州の前衛の現代音楽を得意とするイギリスの弦楽四重奏団 Arditti Quartet の来日公演を聴いてきました。 彼らの演奏を収録したCDは十数枚は持っていますが、 コンサートで聴くのは2000年 [鑑賞メモ] 以来なので約20年ぶり。 その時からは Arditti 以外はすっかり入れ替わってます。 今回は、演奏される曲への興味というより、 2003-2015にオランダの Nederlands Dans Theater [関連する鑑賞メモ] に在籍し、現在は Opto を主宰するなど、 コンテンポラリーダンスの文脈で活動する振付家ダンサー 小㞍 健太 との共演に興味を引かれて、足を運んでみました。

ホワイエで小㞍による「インスタレーション」があるという話だったので、早めに会場に行って暫くすると、黒いTシャツパンツ姿の 小㞍 が登場。 開演待ちをする観客たちの合間で踊り出しました。 客弄りするほどではありませんでしたが、強いオーラでステージ的な空間を作り出すことなく、 客の間を移動しつつ、その姿勢で空間を変えていきました。 時折、笑顔を見せる時もあり、観客を化かす道化のように感じられました。 ストールに座って貰ったフライヤの整理をしていたので、そのまま座って観ていたら、小㞍さんに隣に座られてしまいました。 変に逃げるわけにもいかないので、大人しく座っていたら、「素敵な服ですね」と声をかけられたり。

コンサートの前半は、ダンスとの共演なして、日本の作曲家の2曲を演奏しました。 最近、このタイプの音楽から遠ざかっていることもあり捉えどころ無かったのですが、 あからさまに日本的な音階というわけではないものの、ポルタメントも使った音階の移動などに、ふと日本的な雰囲気を感じたりしました。

後半はダンスとの共演で、ドイツの作曲家 Wolfgang Rihm の2曲を演奏しました。 クラシック音楽の専用のホールでダンス等の上演は想定されていない作りの舞台ですが、 上手半分で正方形のマットの上でダンス、下手半分で演奏、と、分かれて並置するよう。 共演ならではの演出の妙は無さそうなセッティングでしたが、実際に始まってみると、 ダンス側の後方に置いた4枚の鏡でそれぞれズレた角度からダンサーを映し出したり、 演奏してる側の背景にシルエットを映したり、と、干渉は避けつつも単なる並置とは違う仕掛けが感じられました。 開演前にホワイエで上映されていたスタディの際の映像に引きづられたかもしれませんが、 1曲目の Geste zu Vedova の時は、 音楽の構造を視覚化するというか、4つの弦楽器の音の緊張関係を体で示すかのよう。 しかし、2曲目の “Im innersten” になると、音楽もときおり旋律が浮かび上がるようになり、 ダンスも音楽の視覚化というより、マイム的な動きも交え表情もドラマチックに怒りや苦悩を描くよう。 そんな変化も印象に残ったパフォーマンスでした。