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Review: David Byrne (live) @ Outdoor Theatre in Coachella 2026 Week 2 (streaming)
2026/05/05
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
David Byrne
Outdoor Theatre, Empire Polo Club in Coachella 2026 Week 2
streaming: 2026/04/19, 14:25-15:25 JST.
setlist: 1)Everybody Laughs 2)And She Was 3)Strange Overtones 4)House In Motion 5)(Nothing But) Flowers 6)This Must Be The Place (Naive Melody) 7)What Is The Reason For It? 8)Slippery People 9)When We Are Singing 10)Psycho Killer 11)Life During Wartime 12)Once In A Lifetime 13)Burning Down The House

前作 American Utopia (Todomundo / Nonesuch 565710-2, 2018) が、というより、 そのショーの映画化 David Byrne's American Utopia (Spike Lee (dir.), 2020) が素晴らしかった [鑑賞メモ] David Byrne が、新作 Who Is The Sky? (Matador, OLE2178CD, 2025) を引っ提げてツアー中です。 そのツアーの一貫としてアメリカ・カリフォルニア南部の砂漠の中にある Coachella Valley で開催されたポピュラー音楽フェス Coachella (Coachella Valley Music and Arts Festival) に出演し、そのライブが YouTube で無料配信されました。 Coachella は続く二週末にほぼ同じラインナップで開催されるのですが、第1週での David Byrne のライブ (2026-04-11) の評判がとても良かったので [Rolling Stone 誌の記事]、第2週のライブを配信で観ました。

フェスの中での1時間のセットということで、ツアーでの通常のセットからの抜粋版の構成だったよう。 新作アルバムからの曲は3曲で、Talking Heads 時代の曲が過半の8曲を占めていました。 ダンサー兼コーラスだけでなく、ワイヤレスを駆使して全てのミュージシャンが楽器を抱え、移動しながら踊り演奏するパフォーマンスは Amarican Utopia 同様で、 その続編というかヴァリエーションとでもいうもの。 American Utopia ではスーツの衣装もグレーで照明も青白い光を使い、ミニマリズムを強調していました。 しかし、Week 2 では鮮やかな青一色の (Week 1 はオレンジ一色の) 作業服風の衣装で、何もない方体の舞台の背景と左右に映像を投影します。 ミニマリスト的な美学は残しつつも、色彩感豊かなステージに変奏していました。

そんな色彩感だけでなく、 American Utopia も控えめながらその色はありましたが、 このツアーでは David Byrne のMCや、使われる映像も、もう一歩踏み込んだ感がありました。 新作の曲の前のMCが特に印象的で、愛の意味についての曲 “What Is The Reason For It?” の前のMCでは、 映画監督 John Cameron Mitchell に言われた言葉 “Love and kindness are the most punk things you can right now” を引きつつ、 自分の言葉として “Love and kindness are a form of resistance” と。 さらに、歌うことに関する歌 “When We Are Singing” の前には、コロナ禍下2020年のイタリアで 解放記念日 (レジスタンスの日) でベランダで人々が歌ったというエピソードを映像付きで紹介したり。 David Byrne ならではの抵抗 (レジスタンス) の形 —愛と親切さ、そして歌うこと— を示そうという意図を感じるMCでした。

もちろん、新作からだけでなく Talking Heads 時代の曲も取り上げ、 後期の曲の中からは消費主義的な豊かさと社会的無関心に関する歌 “(Nothing But) Flowers” を取り上げました。 そのコードレスの自由なパフォーマンスが近年のライブのルーツにも感じられるビデオ [YouTube] も印象的な佳曲でしたが、 今歌われると、“And as things fell apart / Nobody paid much attention”「物事がおかしくなっているのに/誰もたいして注意を払わない」という歌詞は当時以上に重いもの。 さらに、このライブでは “There was a shopping mall. Now, it's all covered with flowers” という歌詞に呼応するように看板も外され棚も空のショッピングモールの内部が大写しされ、 “(Nothing But) Flowers” ではなく “Nothing (But Flowers)” と前に強調が移り、当時うっすら感じられた楽観が後退し、より悲観に寄ったようにも感じられました。

後半、“Psycho Killer” 以降は Stop Making Sense 以前の 前期 Talking Heads の曲で固めてきましたが、ここに入ると、映像はほぼ使わなくなり、照明も暗めの青や赤の単色に。 照明を落としての足元だけを照らすような照明や衣装をうっすら蛍光で浮かびあがらせるブラックライトも使い、 マイム的な身振りというよりフォーメーションダンスを効果的に、抽象的でミニマリスト的なステージへと転換しました。 しかし、そんな中、“Life During Wartime” [YouTube] の後半で、 第2次トランプ政権下のアメリカで起きている ICE (Immigration and Customs Enforcement, 移民関税捜査局) の暴力的な摘発・鎮圧の様子を捉えた映像がステージの背景に大写しされました。 Stop Making Sense [鑑賞メモ] の中でもその振付に強烈な印象を残した曲ですが、 今の時代における「戦時下の生活 (Life During Wartime)」の歌詞の意味に気付かされた一方で、 もはや歌詞中のフィクションでもメタファーでもなく現実になってしまったことに複雑な気分になりました。

3月にイギリス・ウェールズの首都カーディフでのライブの The Guardian 紙に載った評は、 “David Byrne review – in life during wartime, this show will restore your faith in humanity” と五つ☆で、 もちろんタイトルに “Life During Wartime” を含めていますが、掴みに “(Nothing But) Flowers” の歌詞を引いています。 去年12月1日にアメリカ公共放送NPRの Tiny Desk Concert に時 も、前半に新曲2曲、後半 Talking Heads 時代の曲から “(Nothing But) Flowers” と “Life During Wartime” を取り上げていました [YouTube]。 やはり、Tiny Desk Concert でも今演るべきメッセージを持った曲を的確に選んで演ったのだな、と。 さすがと思う一方、David Byrne は今までメッセージ性を解りやすくは押し出さない多義的な、アーティな作風だったと思うだけに、そこに彼の抱いている危機感を見るようでした。