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Review: Ecole de cirque, Phare Ponleu Selpak, Holiday Ban Touy Ban Tom
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2007/08/15
東京都児童会館ホール
2007/08/15, 18:00-19:00
Circus Actors: Chhith Phearath, Roun Sarav, Nouv Vannara, Kim Tina, Sam Sary, Houn Sopheak. Musicians: Ly Vanntheth, Mam Sokemera, Pang Sopheap, Pho Borin, Vin Seila. Technician: Meas Mongkol. Manager: Jean Christophe Sidout. Director: Khuon Det.

Phare Ponleu Selpak は、 1994年にタイ国境に近いカンボジア北西部のバッタンバン (Battam Bang, Cambodia) に設立された、 絵画学校 (Ecole de dessin)、音楽学校 (Ecole de musique) と サーカス学校 (Ecole de cirque) を運営している NGO (非政府組織) だ。 そのサーカス学校と音楽学校の学生達によるサーカス公演を観てきた。 どういうものか想像できなかったうえ、学生の公演ということで、 それほど期待していなかったのだが、 予想に反して普通に楽しめた公演だった。

サーカスといっても、技を見せるというより、演劇的なもの。 カンボジアのストリートチルドレンの日常生活の様子を、 サーカス技と伝統楽器を交えた音楽で描いていくような舞台だった。 このような構成の仕方は、フランスのサーカスに近い印象を受ける。 例えば、2005年の静岡で観たフランスのカンパニー Les Bleus De Travail (写真, レビュー) が演じていたフランスの都市下層労働者を、 カンボジアのストリート・チルドレンに置き換えたような作品、と言えるだろう。 確かに派手な大技は無いし、いい味出した渋い親父キャラとは演じられないし、 辛辣な風刺など望むべくもないが、子供ならではの明るい感じを生かした場の雰囲気を楽しめた。 そこがこの舞台の最も良かった所だろう。

技については、確かにジャグリングやディアボロの高度な技などの見所は無いが、 縄跳びやアクロバットのような技での身のこなしの軽快さは、 見ていて気持ち良かった。

音楽は、カンボジアの伝統的な楽器を使う、伝統音楽色の強いものだった。 といっても、サーカスらしく、舞台装置や小道具でもある 屋台の鍋・食器類や、小屋のポリ管を楽器にしていたし、 もちろん、electric guitar や snare drum も使って、 舞台上の演技に合わせてメリハリを付けていた。 そして、そういうブリコーラージュな感じも、 ストリート・チルドレンという舞台のテーマに合致していたように思う。

サーカス作品の上演に先だって、 音楽学校の学生による伝統楽器による伝統的な音楽の演奏と、 創設者の1人 Khuon Det 氏による Phare Ponleu Selpak の簡単な紹介があった。 一時間程の短い公演だったし、 海外の現代ダンス・演劇のカンパニーの日本公演でよく行われているように、 公演後にポストトークをするというのでも良かったように思う。

Phare Ponleu Selpak は フランスの NGO Enfants Refugies Du Monde (世界の難民の子供達) の支援を受けており、 フランスのアーティストが多く関わっているようだ。 このサーカス公演がフランスのサーカスに近い印象を受けるのも、 そういう影響があるのかもしれない。 フランスのサーカス Les Cousins の Julot (関連レビュー 1, 2) が Phare Ponleu Selpak のサーカス学校に関わっており、 彼を通して国際サーカス村と縁が出来、 今回の日本ツアーが実現したようだ。 この公演は7/26から8/16までの日本ツアー17公演の一つ。東京の他にも 沖縄市キジムナーフェスタダンス白州 などで公演を行っている。

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