文化大革命後の開放政策 (1978-) の下で国内にもたらされた海外の近現代美術の動向 に対するリアクションに始まる1980年代半ば以降の中国 (中華人民共和国) の 現代美術の流れを追った展覧会だ。
前半の絵画やコンセプチャルな作品は、欧米の現代美術の後追い勉強、という印象が否めなかった。 しかし、1990年代前半に、北京東村を拠点に活動した 馬 六明 (Ma Liuming) や 張 洹 (Zhang Huan) によるパフォーマンス中心の活動は やっぱり面白かったのだなあ、と実感。 その後の作品になると洗練が進み、良くも悪くも欧米の現代美術と変わり映えしなくなってしまう。
『デ・ジェンダリズム』展 (世田谷美術館, 1997) には 馬 六明 が参加していたし、 張 洹 のパフォーマンス (ワタリウム美術館, 1997) も生で観る機会もあり、 北京東村の活動については1990年代後半に知る機会があった。 そして、その時に観たものよりも大人しい作品しかこの展覧会では展示されていなかった。 それでも、欧米の動向からふっ切れたでたらめさがオリジナリティとなっており、 洗練と対極にある勢いが感じられた。
今回初めて観た中で面白かったのは、孫 原・彭 禹 の 「老人ホーム」 ("Old Person's Home", 2007)。 実物大でリアルな樹脂製の人形を載せた電動車椅子が13台が、 10m四方程度のスペースを、互いにぶつかり合いながら前後に揺れるように動いている、 というインスタレーションだ。 車椅子に載っているのは具体的な人物を想定したものと思われ、 宗教指導者や革命等の指導者とおぼしき服装をしているものが中心だった (その中には PLO の Yaser Arafat らしきものもあった)。 ガシガシと車椅子がぶつかり合う様子が、 紛争が絶えない世界をユーモラスに表現しているようにも感じられた。