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Review: 『ネオ・トロピカリア —— ブラジルの創造力』 @ 東京都現代美術館 (美術展); 森山 大道 & Miguel Rio Branco 『共鳴する静かな眼差し』 @ 東京都現代美術館 (写真展); 藤原 大 + イッセイ ミヤケ クリエイティブ ルーム & Campana Brothers 『カラーハンティング ブラジル』 @ 東京都現代美術館 (デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2009/01/02
Neo Tropicália — When Lives Become Form
東京都現代美術館
2008/10/22-2009/01/12 (月休;11/3,11/24,1/12開;11/4,11/25休;12/28-1/1休), 10:00-18:00.

2008年がブラジル移民100周年だったことを記念した 「日本ブラジル交流年」の一環として企画された、 ブラジルの現代美術と建築、ファッションの作家27組を紹介する 大規模な展覧会だ。 ブラジルの現代美術を紹介する展覧会としては、 2004年に東京国立近代美術館で開催された 『ブラジル:ボディ・ノスタルジア』があった [レビュー]。 『ネオ・トロピカリア』を観て、 9組の作家のみの『ブラジル:ボディ・ノスタルジア』は 厳選されていたのだなあ、と実感した。

展覧会の中で最も印象に残ったのは、新具体主義 (Neoconcretismo) の Hélio Oiticica、Lygia Pape、Lygia Clark。 特に、Oiticica によるテント地の服というかケープのようなもの観客に着させて ヘッドホンで音楽を聴かせる作品 "Parangole Noblau" (1978) が楽しかった。 自分がギャラリーに入ったとき、服は壁のフックにかけられたまま、 観客はそれを見ながらヘッドホンで音楽を聴いていた。 そこで自分が服を被って音楽に身体を揺らしたところ、次第に他の客もそうし始めた。 そのうち、5歳くらいの女の子がやってきて、服をとっかえひっかえ着替えながら 楽しそうに音楽を口ずさみながら小躍りする所を見ることができた。 そういう様子を見ることができたのが、とても良かった。 ちなみに、Oiticica は、1960年代末の音楽運動 Tropicalismo の名前の元となった インスタレーション "Tropicália" で知られる作家だ。

他には、Rivane Neuenschwander のビデオ作品が面白かった。 愛の言葉が書かれた紙片を尾鰭に付けた金魚が泳ぐ様子を捉えた Sergio Neuenschwander & Rivane Neuenschwander, "Love Lettering" (2002)、 直径2cm程の丸い色紙を蟻が運んでいる様子を捉えた Cao Guimaraes & Rivane Neuenschwander, "Quarta-Feira de Cinzas / Epilogue" (2006) など、生物を使って作家の思い通りにならない動きを取り込んでいる所が興味深かった。 ちなみに、『ブラジル:ボディ・ノスタルジア』では Neuenschwander は香辛料を使ってドローイングを描く作品を出展していた。 作風は少々分裂しているようだ。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での2007年の個展 [レビュー] も素晴らしかった Ernesto Neto は 地下1階から地上2階までの大きな吹抜けの空間に インスタレーション "From "Leviathan Thot - Finger" A Liquid Finger Touch" (2008) を作り込んでいた。 有機的な形態は相変わらずだが、規模が大き過ぎて、 コクーンのように包み込まれるような感覚が失われてしまっていたのが、 少々残念だった。

『ネオ・トロピカリア』に合わせて、 ブラジルと日本の作家による2つの展覧会が開催されている。 それについても簡単に。

森山 大道 (Daido Moriyama) & Miguel Rio Branco
A Quiet Gaze, Echoing Worlds
東京都現代美術館
2008/10/22-2009/01/12 (月休;11/3,11/24,1/12開;11/4,11/25休;12/28-1/1休), 10:00-18:00.

森山 大道 は彼らしい少々画面も傾いだモノクロ写真で ドキュメンタリ的にサンパウロ (Pão Paulo) を撮り、 Miguel Rio Branco は東京できつい色のカラー写真で まるで抽象画を構成するように東京を撮っていた。 そして、後者の作風の方が自分の好みだと再確認した展示だった。 『ブラジル:ボディ・ノスタルジア』で観たとき程には Miguel Rio Branco の写真から ゴス (Gothic) やバロック (Baroque) のことを意識させられなかったのは、 その色の強さのせいだろうか。

藤原 大 (Dai Fujiwara) + イッセイ ミヤケ クリエイティブ ルーム (Issey Miyake Creative Room) & Campana Brothers
Color Hunting in Brazil
東京都現代美術館
2008/10/22-2009/01/12 (月休;11/3,11/24,1/12開;11/4,11/25休;12/28-1/1休), 10:00-18:00.

日本の服飾デザインの 藤原 大 + イッセイ ミヤケ クリエイティブ ルーム と ブラジルのプロダクト・デザインの Campana Brothers を紹介する展覧会。 両者の作風がすれ違っていたせいか、あまりピンと来なかった。 しかし、藤原 大 + イッセイ ミヤケ クリエイティブ ルーム の 「ジャングルフォン」が面白かった。 穴に大きな葉を差し込むと、その葉が振動体となって音が聴こえるというもの。 2002年に 古賀 敬司 が特許取得した「生け花スピーカー」を使っているという。 こういうもの見付けてきて巧く応用する所も、 アート的というよりデザイン的と感じた。