ベルギー (Belgique / België / Belgium) の コンテンポラリー・ダンス・カンパニー Les Ballets C. De La B. の Gabriela Carrizo (アルゼンチン (Argentine) 出身) と Franck Chartier (フランス (France) 出身) によって 1999年に活動を始めたユニットが Peeping Tom だ。 日本初公演の Le Sous Sol は、 Le Jardin (2002)、 Le Salon (2004) に続く三部作の最終作にあたるが、 それぞれ独立したストーリーを持っているという。
歌手がいるだけでなく、少いながらセリフもあり、 判りやすい物語がある程ではないが、演劇的なダンスだった。 死者が行き交う土に埋もれた地下室という死後の世界を表現していたが、 死後の世界なのにエロティックな所がシュールにも感じられた。 しかし、そのような物語的な面よりも、 10cm程の厚さで一面に柔らかくほぐした土を敷き詰めた舞台の上で 転げ回るような動きが最も印象に残った。 それも反り返って跳ねるように前転したり、 Carrizo、Chartier、Lefeuver の3人が絡み合ったまま転がったりと、 アクロバティックな転がり方を見せた。 これも、硬い床ではなく柔らかく土が敷き詰められているからこそ 続けられる動きだろう。 転げ回りながら跳ね上げる土も、動きを強調する効果があった。 舞台後方、窓から流れ込んだという設定の土の山の中に ダンサー出入り口が仕込まれていた。そこからの出入りがユーモラスで良かった。 このような土の使い方が楽しめた舞台だった。
ダンサーだけでなく、80歳過ぎの女優 Maria Otal や 貫禄ある体形の mezzo-forte 歌手 Eurudike De Beul、 さらには日本人エキストラが6人出演し、 ダンス的に鍛えられた動き以外のものが入ったことも、 演劇的に感じた一因かもしれない。 De Beul はゆったり腰を下ろしていることが多かったのだが、 そんな中で大きな体を揺するようなダンスを一回見せたのが、強烈だった。
Carrizo 演じる舞台上最も若い女性は、舞台上で Gabriela と呼ばれており、 時折、天使の羽を背に付けることもあったので、 その名前からして神のメッセンジャー (the Angel Gabriel) 役なのだろうか、 と思いながら観ていた。 しかし、特にそれらしき場面も無く終ってしまった。 終ってから演じていた女性ダンサーの名前が Gabriela だったことに気付いた。 天使の羽は、その名前に着想したシャレのようなものだったのかもしれない。