TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 柴田 敏雄 『Boundary Hunt - type55』 @ 鎌倉画廊 (写真展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2010/10/11
柴田 敏雄
『Boundary Hunt - type55』
鎌倉画廊
2010/09/04-10/30 (月火祝休), 11:00-18:00.

山中の擁壁や砂防ダム、ダム洪水吐きなどを、抽象画のように捉える写真家 柴田 敏雄 の、 2000年前半にインスタントフィルム Polaroid type 55 を使って撮った写真を集めた展覧会だ。 インスタントフィルムといっても、type 55 は大型カメラ用4×5判の白黒フィルムで、 ポジのプリントだけでなく、精細なネガのフィルムが得られるもの。 展示作品の半数はフィルムから引き伸ばして大判にゼラチンシルバープリントしたものだった。 残り半数は小判のものだったが、オリジナルのポジ・プリントではなく、 ネガ・フィルムからゼラチンシルバープリントしたもの。

通常のフィルムのときと作風が大きく変わるわけではなく、 「境界の追求」という題が暗示するように、 まるで幾何学的な線を描くように風景を切り取る写真だ。 しかし、他の作品に比べても、クロースアップしたかのように切り取って 抽象的なテクスチャを捉えたような画面のものが多かった。 インスタントだからといってプリントが粗くなるということもなく、 この写真がインスタントフィルムを使っていると最も意識させられたのは、 トリミングをせずに残された枠近くのシールを剥がしたような痕だ。 特にテクスチャを強調したような写真では、撮影されたものとフィルムの痕跡が 対等に扱われているように感じられる所が面白かった。 縦構図で32×40の大判に引き伸ばしてプリントした “長野県下伊那郡大鹿村” (2000) や “Sequoia National Park, CA” (2001) など、 今回のそんな作風が堪能できる作品だった。

このような抽象的な形状や質感の面白さを楽しむような作品は、大判の方が面白い。 写真集やポストカードのような形で手に取って観るとそうでもないかもしれないが、 小判を額装したものを見ると、テクスチャが覆う面も狭く、面白さが削がれるようにも感じた。