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Review: やなぎみわ演劇プロジェクト 『1924 Tokyo-Berlin』 @ 京都国立近代美術館 (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/07/31
やなぎみわ演劇プロジェクト
京都国立近代美術館
2011/07/31, 15:00-17:00.
作・演出: やなぎみわ
キャスト: 金替 康博 (土方 与志), 岡嶋 秀昭 (村山 知義), 山本 麻貴 (案内嬢), 諸井 直嗣 (モホイ=ナジ・ラスロー [声の出演]).

現代美術の文脈での活動で知られる やなぎみわ は、 2010年の Festival Tokyo 関連企画 メイドカフェ「カフェ・ロッテンマイヤー」内で同名の演劇を上演して以来、 演劇プロジェクトに取り組んでいる。 その最新の三部作『1924』の第一部『1924 Berlin-Tokyo』が京都国立近代美術館で上演された。 京都まで足は伸ばして観たわけではないが、ustream を使ってインターネット生中継されたものを観ることができた。 実際にその場で観るのとは受ける印象も異なる事も多いと思うが、備忘録として感想を。

『1924 Berlin-Tokyo』は、 『視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション』展 [関連レビュー] を開催中の京都国立近代美術館を会場に上演された。 なやぎみわ の初期の代表作から抜け出したようなデパートの案内嬢 [関連レビュー] が、 モホイ=ナジ展や収蔵品展中の同時代の作家作品をギャラリーツアーする所から始まった。 案内嬢は3名。うち、1名 (山本 麻貴) が、 最初はいかにもハイトーンな案内嬢口調で、そして最後には講談の節で、ギャラリーツアーをした。 演劇がかったギャラリーツアーということで、 『前衛下着道 鴨居羊子とその時代』展 (川崎市岡本太郎美術館, 2010) での 唐ゼミ☆ × チュニック のパフォーマンス 『したぎと中世 〜わたしは驢馬になって下着をうりにゆきたい〜』 [レビュー] を思い出した。 ギャラリーツアーの最終地は演劇上演の場となる舞台と客席を設けた劇場的なスペース。 講談師による寄席の呼び込みのような形で会場入場を促す所が、ちょっと面白かった。

後半は演劇。 1924年に築地小劇場を立ち上げた 土方 与志 と そこで舞台美術を手がけることになる 村山 知義 の出会いと、 構成主義的な舞台美術として知られる『朝から夜中まで』 (1924年12月) の制作に関する話を、 Moholy-Nagy が 村山 に作品を依頼した (それも電話で作品を発注する Moholy-Nagy の “Telephone Picture” のプロジェクトの1つとして) というフィクションも交えて、描いていた。 舞台には製作中の『朝から夜中まで』の舞台美術らしきものが並べられており、背景にはビデオ投影。 時折、案内状が異化するかのように割り込むものの、演出はかなりベタな小劇場演劇という感じで、 むしろ、言及される固有名詞等のネタに反応して楽しむような舞台だった。

このパフォーマンスを観て1920年前後の前衛芸術運動への理解が深まったという程ではないが、 Moholy-Nagy についても築地小劇場界隈のプロレタリアート演劇についても 以前からそれなりに興味があっただけに、そのネタ使いだけでも楽しめたように思う。 正直、最近の やなぎみわ の作品は観てもピンとくることが無かったのだが、 この演劇プロジェクトは、第二部、第三部を観ても良いかなと思える程度、楽しめた。

ちなみに、第二部 『1924 海戦』 は、横浜トリエンナーレ2011年関連企画として 2011年11月に神奈川芸術劇場 (KAAT) で上演が予定されている。 こちらは、築地小劇場の話により突っ込んだ内容になるという。 第三部 『人間機械』 は2012年5月に上演予定 (上演場所未定) となっている。

やなぎみわ演劇プロジェクト の話からは少し外れるが、 『1924 Berlin-Tokyo』の前半や 唐ゼミ☆ × チュニック 『したぎと中世 〜わたしは驢馬になって下着をうりにゆきたい〜』 のような、演劇的ギャラリーツアーの試みも、 もっと様々な形で行われても良いようにも思った。