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Review: 『建築、アートがつくりだす新しい環境 —— これからの“感じ”』 @ 東京都現代美術館 (建築展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2012/01/03
『建築、アートがつくりだす新しい環境 —— これからの“感じ”』
Architectual Environments for Tomorrow: New spatial practices in architecture and art.
東京都現代美術館
2011/10/29-2012/1/15 (月休;1/2,1/9開;12/29-1/1,1/4,1/11休), 10:00-18:00.

去年から始まった Tokyo Art Meeting の第二回。 去年は現代美術展だったが [レビュー]、 今年は建築事務所 SANAA との共同企画で 若干の美術作品もあるものの、ほぼ建築展と言っていい内容。

強く方向付けられているわけではないですが、一つの傾向は、 シンプルな約束事から反復などで複雑な形状をどう作り出すかという試み 伊東 豊雄 [関連レビュー] をはじめ、 平田 晃久 とか Matthew Ritchie とか。 最近の建築展でよく感じることではあるのだが、自分が面白く感じるのはこの点だった。 そんな中に El Anatsui [関連レビュー] の 作品が置かれていて、彼の作品もそう観ることができるなあ、と、気付かされたりもした。

しかし、個別に印象に残ったのはそのような傾向のものではなかった。 一つは、この展覧会の共同企画者でもある 妹島 和世 + 西沢 立衛 のSANAAによる Rolex Learning Center, Ecole Polytechnique Fédérale de Lausanne (スイス・ローザンヌ連邦工科大学 ロレックス・ラーニングセンター)。 正直に言えば、模型を見た時点ではピンとこなかったのだけれども、 Rolex Learning Center を捉えた Wim Wenders による3D短編ビデオインスタレーション If Buildings Could Talk... (2010) を観たら、映像の力かもしれないが、なかなか良さげではないかと。 模型では波打つ一層の建物という程度のイメージしか湧かなかったのだけど、 Wim Wenders のビデオで観ると、 なだらかな起伏の続く公園の芝生とそのあちこちにあるオープンカフェ、休憩所や野外ステージなどを 芝や人工地盤上に作り、 その上の連続した屋根で覆って屋内空間化したよう。 しかし、屋根を支える太い柱が無く、側面はガラス張りなので、屋外のような解放感はそれなりに残しているという。 ちなみに、この Wenders のビデオインスタレーションの La Biennale de Venezia の2010年の建築展でプレミア上映されたもの。 しかし、Pina (2011) より先に これで Wenders の3D映像を体験してしまうとは……。

もう一つ印象に残ったのは、 Transsolar & Tetsuo Kondo: Cloudscape (2010)。 部屋の上部を体温近くまで暖める一方、下に冷気を残し、そこに水蒸気を放つことにより、 中間層に層雲状の霧の空間作り出すというもの。 原理的には理解できるものだけれども、ここまで巧く制御して雲を作れるものかと感心してしまった。 この展覧会では美術館の外に足場と透明のビニールシート高さ10m程の透明な方体の空間を作り、 そこに斜めに直線の階段を置いて、雲を抜けることを体験できるようになっていた。 しかし、La Biennale de Venezia の2010年の建築展では、 会場のレンガ作りの建物の中に雲を作り、雲の中を回廊で歩き回ることができるようになっていたよう。 そういうインスタレーションを体験してみたかった。