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Review: Studio Azzurro: Kataribe @ 川崎市市民ミュージアム (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2012/10/09
川崎市市民ミュージアム
2012/09/22-11/04 (月休;10/8開;10/9休), 9:30-17:00.

1982年にイタリアのミラノ (Milano, Lombardia, IT) で Fabio Cirifino (写真)、Paolo Rosa (映画、ヴィジュアル・アート)、Leonardo Sangiorgi (グラフィックス) の3人が結成した Studio Azzurro は、 インタラクティヴな映像投影を使ったインスタレーションやパフォーマンスで知られるグループだ。 1995年に Stefano Roveda (インタラクティヴ・システム) が参加している。 約10年前に何回かそのパフォーマンスやインスタレーションを楽しむ機会があったのだが、それ以来久々の日本での展覧会だ。 今回は、近年取り組んでいる Portatori di Storie [Bearers of Stories, 語り部] シリーズ (全5作品) からの2作品、 2作目 La Quarta Scala [The Fourth Ladder, 第四の梯子] (2008) と、 3作目 Sensitive City (2010) を中心とした展示だ。

Portatori di Storie は、 等身大の大きさで壁やスクリーンに投影された歩いている人物像に手を触れると、 立ち止まって住んでいる街や属している共同体についてのちょっと私的な話をする映像に切り替わるというものだ。 そのインタフェースは、街行く人に声をかけてその街の話を聞くことのアナロジーだ。 しかし、人物に触れるて話を聞くといっても、肩をぼんと叩けば振り返って話してくれるわけではなく、 腕を持って引き止めるという感じで触れ続けないと話してくれないし、手を話すと話を止めて行ってしまう。 反応し過ぎるのを防ぐためという面もあると思うが、 触れた際の反応を理解してうまく話を訊くことができるようになるまで、少々時間がかかってしまった。 歩いている映像から話する映像への切り替えも粗い。

La Quarta Scala は2008年の SITE Santa Fé International Biennale のために制作されたもので、 ニューメキシコ州サンタフェ周辺のプエブロ (pueblo, ネイティヴアメリカンの伝統的な共同体・集落) に取材した作品。 自分が触れた限りでは、登場する人物は皆話をするだけ。 最初に La Quarta Scala に触れたときは、いまいちに感じられてしまった。

一方、Sensitive City は2010 の上海万国博覧会のイタリア館のために制作されたもので、 イタリアの6つの街、シラクーサ (Siracusa, Sicilia)、マテーラ (Matera, Basilicata)、ルッカ (Lucca, Toscana)、キオッジャ (Chioggia, Veneto)、トリエステ (Trieste, Friuli-Venezia Giulia)、スポレト (Spoleto, Umbria) に取材した作品だ。 こちらも、基本は話をしてくれるのだけれども、 人によっては歌出したり、楽器を演奏し始めたり、ジャグリングを始めたり。 それも、周囲から仲間が集まって来て数人組の楽団になって、タランテッラやジャズの演奏を始める場合も。 そんな反応の意外さが楽しめた。 さらに、話を聞くだけであれば等身大の人に触れる必然性をあまり感じられなかったのだが、 話だけではなくパフォーマンスも交えることにより、 等身大の映像の面白さが増して、その形式を採る説得力が増していた。 もちろん、音楽やジャグリングのようなパフォーマンスは言葉がわからなくても判り易いということもある。 そんなこともあり、インタフェースの詰めの甘さも気にならず、Sensitive City はとても楽しめた。

今回の展覧会は、他に2作品。 La Pozzanghera [水たまり] (2006) は、 床に投影したインタラクティヴな映像で水たまりを模した遊び心を感じる小品。 Il Nuotatore [泳ぐ人] (1984) は、初期作品で、 ずらりと横に並べたCRTディスプレイに実寸の人が泳ぐ映像が写るというもので、 CRTディスプレイの制約を逆手に取ったユーモアが面白かった。

また、Studio Azzurro 結成30周年ということで、 過去の作品の映像や出版物を集めた資料コーナーも設けられている。 そこで、PCでインタラクティヴなメニューで観ることができた映像96編は全て インターネット動画サイトことができる [Studio Azzurro on Vimeo]。 最近はパフォーマンス作品はあまり制作していないのか、パフォーマンス映像の最後が2006年だというのが、少々残念。 最近は、プロジェクション・マッピングにも取り組んでいるようで、 2011年にミラノ (Milano, Lombardia, IT) で行った Risveglio [Vimeo] などなかなか良さげだ。プロジェクション・マッピングはサイトスペシフィックなので 日本に持ってくるのも難しいだろうが、彼らのプロジェクション・マッピングをちゃんと観てみたい。