イギリスを拠点に活動するダンサー/振付家 Akram Khan の新作ソロは、 バングラディシュ系というバックグラウンドを題材とした自伝的な作品。 カタック (kathak; 北インド宮廷舞踊) や武術 (martial arts) 的な動きは相変わらず、 80分を一人で踊りきったのはさすがと思ったが、 かなり判り易い演出で、エンターテインメント的に感じられる舞台だった。
ヨーロッパに住むバングラディッシュ系というアイデンティティは今まで観た作品でも主要なテーマとなってきたもの。 しかし、今回の作品では、バングラディシュの村落での暮らしや独立戦争を題材にしたりと、 もう一歩バングラディッシュ側に踏み込んだよう。 オフショアのコールセンターの題材にした所なども、ヨーロッパとバングラディッシュの関係が 移民してヨーロッパ在住となるのとは違う形になりつつあることを示すよう。 そういう題材の選び方は興味深く感じられた。
録音に合わせて踊るものも含め、セリフを使う場面も多かったのだが、 Zero Degrees [レビュー] のように踊りがセリフを異化するようなものではなく、 むしろ、in-i [レビュー] のときのように説明的。 フロントに半透明のスクリーンを下げてそこにアニメーション (バングラディッシュの森) を投影しつつ踊る場面もあったのだが、 そのアニメーションとダンスが互いを裏切るようなころは無かった。 それであれば、セリフやアニメーションを用いず、 動きだけでそれを観客に想像させるてもよかったのではないか、と。 Jocelyn Pook の音楽も映画音楽的にドラマチック。 そういった演出から、判り易くエンタテインメント的な舞台に感じられた。
映画女優 Juliette Binoche との二人舞台 in-i では そういう判り易さもうまくハマっていたと思ったけれども、 ソロの舞台でそこまで判りやすくすることはないのではないか。