2008年に西武鉄道旧所沢車両工場で始まった「引込線」の第4回は、 「所沢ビエンナーレ美術展」の名を下ろして「美術作家と批評家による第四回自主企画展」に。 もはや関係ない会場で開催しているが、「引込線」の方が名に残った。 今年の会場は、前回2年前に第二会場として使用した給食センターで。 第一会場分が無くなり規模は縮小し、手作りの自主企画展の色が増々濃くなった。
給食センター時代の厨房什器や調理器具の残る雑然とした空間は、作品展示には厳しい。 平面作品やコンセプチャルな作品などは場に埋もれがち。 割れたものを接いだ陶器の映像と陶器が割れる音を使った 箕輪 亜希子 のビデオインスタレーション「迂回路」など、 内部が奇麗に片付けられた古い洋館や元倉庫のような空間であれば映えたのではないかと。
そんな展示空間では、 DHMO ネタを映像やオブジェを使いマッシブな野外展示として視覚化したかのような 前野 智彦 「Stage of Uninhabited/island Season 1-Episode Final」 (写真左上)、 戸谷 成雄 のチェンソー空洞彫刻「洞穴体IV -ミニマルバロックシリーズから-」 (写真右) や 遠藤 利克 の廃油の沁みた炭化木製容器のような作品 「空洞説—浴槽・身体」 (写真左下) など、 物としての存在感が強烈な作品が印象に残る。 あと、ホワイトキューブ的な空間を作りそこでほとんど単色の方形の映像 (周囲を辿る手のような ものも微かに映っていた) を投影した 倉重 光則 「点滅するスクエア—(不確定性正方形)」。 ちょうど 水野 俊介 の 5-string doublebass と 倉重 の鉄板をピックでギリギリと掻く音からなる ライブ演奏付きで観ることが出来たのも幸運だったかもしれない。
眞島 竜男 や 鷹野 隆大 などの参加から新規性も感じられるかと期待したのだが、 場の雰囲気に埋もれたかそれほどでもなく、手作り感や緩さが増してしまったのは残念。 「所沢ビエンナーレ」を外したということは、 2年おきの開催や所沢での開催という縛りを外したという意味合いもあるのだろうか。 世間の派手なアートフェスのカウンターという初志は良かったと思うし、 こういう企画は継続していくことも重要だと思うので、今後の再興を期待したい。
毎回、会期は残暑が厳しい時期なのでそれなりに覚悟して臨んだものの、 今回観に行った8月31日は猛暑日の暑さという空調のない展示スペースには厳しい天気で、 やはり汗だくになりながら観る事に。 ここまで暑くなければ、もう少し作品に集中できたかもしれない、とも。 これだけ暑いと、交通の便が悪い会場なのも辛いもの。 2年前は駅から歩いたものだったが、駅からバスを利用した程だった。