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Review: Andreas Kriegenburg (prod.), Alban Berg (comp.): Wozzeck 『ヴォツェック』 @ 新国立劇場オペラパレス (オペラ)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/04/07
新国立劇場オペラパレス
2014/04/05, 14:00-15:30.
Original by Georg Büchner. Libretto & Music by Alban Berg.
Conductor: Günter Neuhold. Production: Andreas Kriegenburg. Scenery Design: Harald Thor. Costume Design: Andrea Schraad. Lighting Design: Stefan Bolliger.
Georg Nigl (Wozzeck), Roman Sadnik (Tambourmajor), 望月 哲也 (Andres), Wolfgang Schmidt (Hauptmann), 妻屋 秀和 (Doktor), 大澤 健 (1. Handwerksbursch), 萩原 潤 (2. Handwerksbursch), 青地 英幸 (Der Narr), Elena Zhidkova (Marie), 山下 牧子 (Margret).
Chorus Master: 三澤 洋史. Chorus: 新国立劇場合唱団. Children chorus: NHK東京児童合唱団. Orchestra: 東京フィルハーモニー交響楽団.
Première of this production: November 10, 2008 at Bayerische Staatsoper.

20世紀初頭に活動した新ウィーン楽派の作曲家 Alban Berg による1925年に初演されたオペラ作品を、 Volksbühne am Rosa-Luxemburg-Platz, Deutsche Theater Berlin, Thalia Theater 等ドイツの演劇シーンで活動する演出家 Andreas Kriegenburg の演出で Bayerische Staatsoper (バイエルン州立オペラ) が制作したもの。 原作の Georg Büchner の戯曲 Woyzeck も好きですし[関連発言]、 オペラ Wozzeck も Patrice Chéreau 演出のDVDを観たことがあり[レビュー]、 一度は生で観てみたいと思っていた。 といっても、この演出のものも2009年に新国立劇場で上演されたがその時は観に行かず、 その後にNHK教育『芸術劇場』で放送されたものを観て、観に行かなかったことを後悔していた。 待望の再演ということで、早速観に行った。

ミニマルな Chéreau の演出も好きだが、 こういう大掛かりな装置を使った魔術的リアリズム的なイメージも Wozzeck に合っている。 TVで観たときは水を張った舞台の印象が強かったのだが、生で観ると、 むしろ宙に吊った小部屋の使い方が効果的。 高さを下げてせり出し、奥に高く引いたりすることで、場面転換していく。 美しい Marie に愚直な Wozzeck の主役2人も良かったが、 George Grosz の諷刺画のようにデフォルメされた医者 (Doktor) と大尉 (Hauptmann) のキャラ立ちも良いし、 Marie 殺害の共犯としても扱われる貧しい失業者/労働者階級を象徴する黙役の黒服の人々の不穏さも醸し出していた。 演奏の良し悪しまでは判らなかったが、歌や音楽のもつ緊張感も含めて、ライブで生々しく体感することができた。

Kriegenburg はキャリア初期の1991年に Volksbühne で オペラではなく演劇で Woyzeck を手掛けていたとのこと。 その舞台がどんなものだったのか、この Wozzeck の演出の 元となったアイデアがそこにあったのか、気になってしまいました。

ところで、 Die tote Stadt [レビュー] は2階席で観たのですが、 舞台演出は充分に堪能できましたが、演技、特に表情が遠くてもどかしく感じました。 Wozzeck は一度TVで観ているだけに、臨場感を重視して1階の真ん中辺りの席にしました。 さすがに、その席であれば、オペラグラス無しでも表情もよく見えましたし、歌声も演奏も迫力あるものに。 奮発した界隈あったでしょうか。

しかし、Die tote StadtWozzeck を続けて観て、 オペラも面白いものだなあ、と、つくづく。 もちろん、演目や演出にもよるのでしょうが。こういうオペラであればもっと足を運びたいものです。