イギリス National Theatre の制作による2011年の舞台作品で、 National Theatre Live (live screening のプログラム) で繰り返し上映されてきた作品。 映画 Trainspotting (1996) の監督、というより、 今や London 2012 Summer Olympics の開会式の演出で知られる Danny Boyle の演出と いうことで、少々気になっていたのですが、この9月のアンコール上映でやっと観ました。
Benedict Cumberbatch と Jonny Lee Miller という主役2人が Victor (いわゆる「博士」) 役と The Creature (いわゆる「怪物」) 役を入れ替わりつつ上演された作品で、 今回観たのは、Cumberbatch が Victor を演じたバージョン。 The Creature 演じる Jonny Lee Miller の熱演に引き込まれました。 醜いながら教養を持つものの、疎外により善良な心が保てない、という役を演じきっていました。 特に前半、まだ言葉を覚える前の状態では、舞踏を思わせるような動きでそれを表現していた所に引かれました。 もう一方の Benedict Cumberbatch も、少々浮世離れした科学者という Victor の役どころにハマっていました。 他にも様々な登場人物が出てきますが、この二人の存在感が圧倒的でした。
Danny Boyle の演出で、音楽が Underworld という点も期待したのですが、 映像や音楽を駆使した抽象的でスタイリッシュな演出という程ではありませんでした。 前半の The Creature の身体表現や、 円形の舞台で中央に回転したり下から大道具がせり上がったりする部分などは面白いと思いましたが、 後半セリフが増えるとベタな演劇になったようにも感じました。
本来の語り手 Captain Walton は登場せず、友人 Clerval など The Creature に殺される役も減らされているものの、 登場人物の設定は Mary Shelly の原作に比較的忠実で、 特に The Creature の繊細で教養ある内面など原作に沿っていたのは良かったと思います。 この作品で付け加えられた点で引っかかった所といえば、Victor の許嫁 Elizabeth が殺される場面で。 The Creature の要求に彼女は理解を示し、友人として接するの、結局、レイプされて殺されるという。 そう変えた意図が掴めず、かなり後味悪く感じられました。
Royal Opera House の Live Cinema は何回か観ていますが [鑑賞メモ 1, 2, 3]、 National Theatre Live を観るのは初めて、 天井から見下ろすカメラを使ったり、場面転換に合わせてカメラを切り替えたりと、カメラの動きや切り替えが多め。 もっと普通の観客目線の落ち着いたカメラワークで観たいものです。 しかし、たまに足を運んで観てもいいかな、と思う程度には楽しめました。 2016シーズンを含む今後の上映予定の予告編の中で、気になった作品は War Horse (2014)。 第一次世界大戦を舞台とした話で、 南アフリカの Handspring Puppet Company による実物大の馬のパペット を駆使している所が、特に気になります。