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Review: 『アーティスト・ファイル 2015 隣の部屋――日本と韓国の作家たち』 @ 新国立美術館 (美術展); 『ニキ・ド・サンファル展』 (Niki de Saint Phalle) @ 新国立美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2015/09/22
Artist File 2015: Next Doors: Contemporary Art in Japan and Korea
国立新美術館 企画展示室2E
2015/7/29-10/12 (火休;9/22開), 10:00-18:00 (金10:00-20:00).

新国立美術館でアニュアル開催されている若手中堅クラスの現代美術のグループ展 Artist File。 今年は韓国国立現代美術館と共同企画で、日本と韓国の作家12名を集めていた。 全体として強い方向性を示すような企画ではないが、 最近はこまめに画廊巡りする余裕も無いので、こういう企画でチェックしておこうと。 中でも気になった作家・作品について。

Lee Sungmi [イ・ソンミ] は、 車のフロントガラスに使われる強化ガラスを砕いてクッションや毛布のような形状にかためた作品。 遠目の質感がコーデュロイかパイル地かのように感じられ、 近くで見ると貫入のある青磁も思わせるなど、複数の質感を見せる所が面白かった。

Ki Seulki [キ・スルギ] は写真を使った作品。 静的にかっちり撮った屋外・室内の写真に身体の一部を写し込んで人の気配を感じさせる 連作 Unfamiliar Corner (2013) は、 判りやすく視線中央に写し込んだものより、視線を外したような撮り方の方が良かった。 アイルランドの森の中を静的に撮った Post Tenebras Lux では、 長時間露光の中で布を振って、雲のようなぼんやりした不定形な形状を浮かび上がらせている。 佐藤 時啓 のペンライトを使った長時間露光写真も連想させられたが [鑑賞メモ]、 くっきりながら散在する光の点と、ぼんやりながら一箇所に固まる布のシルエットとでは、対称的だとも感じられた。

日本の作家では、やはり、手塚 愛子 [関連する鑑賞メモ]。 テキスタイルを使った、というか、織物を解く作風は相変わらず。 しかし、大きな織物を使って量で攻めるというより、むしろ、それで何を描くのかという所に重点が移りつつあるのかなと、 解かれた織物では無い作品 Ghost I Met (2013) を観ながら思った。

Niki de Saint Phalle
国立新美術館 企画展示室1E
2015/9/18-12/24 (火休;9/22,11/3開;11/4休), 10:00-18:00 (金10:00-20:00).

戦後1950年代から活動したフランスの女性の現代美術作家 Niki de Saint Phalle の回顧展。 まだ那須にニキ美術館があった1990年代半ばに一度そこを訪れたこともあり [鑑賞メモ]、 やはり Nana 以前の射撃絵画などの「怒りの時代」が良いと、再確認。 しかし、当時はそのフェミニスト的な主題の扱いに興味を引かれたものだけれども、 今観ると、 ペンキの垂れ跡も Jackson Pollock のようなアクション・ペインティングの影響も強かったのかもしれないと感じられ、 そちらに興味を引かれた。そんな見え方の違いも面白かった。