TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: Handspring Puppet Company (prod.), William Kentridge (dir.): Ubu and the Truth Commission @ 静岡芸術劇場 (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2016/5/4

4月30日 [鑑賞メモ] に続いて、5月3日も ふじのくに⇄せかい演劇祭 2016 へ。 まずは東静岡へ。この舞台を観てきました。

静岡芸術劇場
2016/5/3, 13:00-14:10.
Conceived and directed by William Kentridge.
Written by Jane Taylor.
Produced by Handspring Puppet Company.
Animation: William Kentridge, Assistant animators: Tau Qwelane, Suzie Gable, Choreography: Robin Orlin.
Cast: David Minnaar (Pa Ubu), Busi Zokufa (Ma Ubu); Gabriel Marchand, Mandiseli Maseti, Mongi Mthombeni (pappeteers).
First performed in 28 May 1997 at The Laboratory, Market Theatre, Johannesburs, South Africa.

現代美術の文脈で知られる南アフリカ出身の作家 William Kentridge が1997年に演出した舞台作品。 Kentridge 演出はもちろん、 イギリスの National Theatre が2007年に制作した War Horse で実物大の馬のパペットを操ったことで知られる 南アフリカ・ケープタウンのカンパニー Handspring Puppet Company の作品ということもあり、 楽しみにしていました。

1994年にANCが総選挙に勝利してアパルトヘイト撤廃された後にアパルトヘイト時代の人権侵害に対して設置された真実和解委員会を題材にした作品。 ユビュ王は人権侵害をした政府、その妻は疑わしいと感じていたものの真実を知らされていなかった国民のメタファーといった所でしょうか。 この二人を演じる俳優による演技がメインで、 昨年 Metropolitan Opera で演出した Lulu [鑑賞メモ] ような凝ったアニメーションの投影や、 War Horse のような大掛かりにパペットを使った演出はなく、そこは肩透かし。 この舞台に使われたアニメーションは 2012年に東京国立近代美術館での個展 [鑑賞メモ] で “Ubu Tell The Truth” (1997) として観ているのですが、 アニメーションだけ観た時に感じたマジックリアリズム的なイメージを、 舞台での演技が説明してしまうような印象も受ける時もありました。

期待が大きかったので物足りなさを感じましたが、下手にドキュメンタリー的な演劇よりは良かったかな、と。 しかし、最近は、Metropolitan Opera での The Nose (2007) や Lulu (2015)、 BAM Next Wave 2015 の Refuse the Hour (2015) など、オペラをよく演出していますし、 こういう最近の作品で来日して欲しかったものです。