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Review: LOD muziektheater (prod.), Kris Defoort (comp.), Guy Cassiers (dir.): House of the Sleeping Beauties (『眠れる美女』) @ 東京文化会館 大ホール (オペラ)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2016/12/11
東京文化会館 大ホール
2016/12/10, 15:00-16:50.
Music: Kris Defoort; Director: Guy Cassiers; Choreographer: Sidi Larbi Cherkaoui
Libretto: Guy Cassiers, Kris Defoort, Marianne Van Kerkhoven. Based on the book of the same name by Yasunari Kawabata (川端 康成 『眠れる美女』).
Actors: 長塚 京三 [Kyozo Nagatzuka], 原田 美枝子 [Mieko Harada]; Dancer: 伊藤 郁子 [Kaori Ito], Singers: Katrien Baerts (soprano), Omar Ebrahim (baritone); Chorus: 原 千裕, 林 よう子, 吉村 恵, 塩崎 めぐみ.
Musicians: 東京藝大シンフォニエッタ; Conductor: Patrick Davin.
World Premiere: May 8th 2009 at the Théatre Royal de la Monnaie / De Munt, Brussels.
Production: LOD muziektheater.

日本ベルギー友好150周年記念で上演されたオペラを観てきました。 といっても、2009年に作られた作品で、音楽は調性や一定のリズムなどほとんど感じられないもの。 歌唱のテクニックにオペラのものを使っているものの、19世紀的な意味でのオペラではなく、 歌ではなく台詞で進行する演劇の場面もあれば、オペラの場面ではダンスもあり、 オペラ、演劇、ダンスという要素を取り込んだ作品と言ってもいいかもしれません。

老人男性へ眠る裸の美女への添寝サービスを提供する館への主人公の男性の訪問を三夜で描いた作品です。 主人公と館の女主人のやりとりを演劇として俳優が演じ、主人公が眠れる美女と過ごす夜をオペラとダンスで演じました。 舞台美術は畳敷の方形のスペースと、後方に障子を巨大化したかのようなスクリーン。 スクリーン中段にダンス用の舞台が設けられていました。 ほとんど抽象化されたようなな映像の投影、暗い中に登場人物を浮かび上がらせるようなライティングなど、 現代的と感じさせるようなスタイリッシュな演出でしたが、引き込まれるような所が特に無いまま終わってしまいました。

この作品の一番の興味は、Sidi Larbi Cherkaoui [レビュー] の振付による 伊藤 郁女 [レビュー] のダンスでした。 といっても、俳優や歌手のいる所まで降りて踊ることなく、ほとんどエアリアルのパフォーマンス。 最初の2夜は大きな布をまとって宙釣りになってのもので、ティシューを使ったエアリアルのパフォーマンスのよう。 3夜目は半透明のスクリーンの後ろでシルエットとダンサーの身体が重なるようなパフォーマンス。 ここでも、後半、ロープを使ってのエアリアル的な動きを交えていました。 Philippe Decouflé [レビュー] が好みそうな エアリアルを交えたパフォーマンスは好きなのですが、 大掛かりなオペラの舞台の中に少々埋没してしまった感があったのは少々残念。

作曲・脚本を手がけた Kris Defoort は jazz/improv の文脈で知っていたミュージシャンで、 それも興味を引かれた理由でした。 そのイデオムを感じさせる展開もあるかと期待したのですが、そうでもありませんでした。 演劇で演じている場面で、微かに piano のソロが聞こえたような気がするのですが、 ひょっとしてこれは Defoort が弾いていたのでしょうか。

演目や出演者から客層が全く読めなかったのですが、招待客が多そうな感じで、 終演後ホワイエで立食パーティが開催されていたようですし、 実はメインは日本ベルギー友好150周年記念行事関係者向けのセレモーニーイベントだったのでしょうか。 にしても、今回、まさかの席ダブルブッキング。それも、自分だけでなく、周り数名いたようです。 ほぼ同等の代わりの席があったからよかったものの、こんなことは初めてでしょうか。 オンラインのチケットシステム使っていても、ある時はあるのでしょうか。