TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 石内 都 『肌理と写真』 (Ishiuchi Miyako: Grain and Image) @ 横浜美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/12/20
Ishiuchi Miyako: Grain and Image
横浜美術館
2017/12/9-2017/3/4 (木休;3/1開;12/28-1/4休), 10:00-18:00 (3/1 -16:00; 3/3 -20:30).

1970年代に活動を始めた写真家 石内 都 の回顧展。 ついこのあいだと思っていた『ひろしま/ヨコスカ』 (目黒区美術館, 2008) [鑑賞メモ] も約10年前で、久しぶり。 それ以降の展開も追えただけでなく、1980年代のモノクロ写真の良さにも気づかされた展覧会だった。

石内 都というと、母の遺物を即物的ながらまるで生前の肉体を想起させるかよう生々し色鮮やかかに撮影した「Mother's」 [鑑賞メモ] が一つのピークと思っていたが、 アレブレボケの1970年代から、1980年代後半に「yokohama 互楽荘」 (1986-1987) や 「Bayside Courts」 (1988-1989) という構図やフレーミングも端正な廃墟の白黒写真を撮っていたことを知った。 このような写真が好みということもあるが、 宮本 隆司 の「建築の黙示録」 (1983-) [鑑賞メモ] との同時代性も感じられ、 今回の展覧会で最も印象の残った作品だった。

「Mother's」以降、「ひろしま/hiroshima」 (2007-) や 「Frida by Ishiuchi」 (2012)、「Frida Love and Pain」 (2012) と 似たような遺品シリーズが続いていたが、 銘仙などアンティーク/ビンテージの絹織物製品を撮った「Silken Dreams」 (2011) となると、また新たな作風に踏み込んているよう。 「Frida by Ishiuchi」「Frida Love and Pain」までは、クローズアップもあるが、遺品の全体像がわかり、むしろ余白も感じられるフレーミングで撮ったものが中心だったが、 「Silken Dreams」では、全体の形状がわからないほどクローズアップすることで、 布のテクスチャ–この展覧会のタイトルでもある「肌理」–にぐっとフォーカスしたような写真が中心になっている。 高い天井のギャラリーに散りばめるような展示もあって、個々の「肌理」を堪能できたという程ではなかったが、 そんな変化も感じさせた展覧会だった。