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Review: 『大正モダーンズ 大正イマジュリィと東京モダンデザイン』 @ 千代田区立日比谷図書文化館 (展覧会)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/08/05
『大正モダーンズ 大正イマジュリィと東京モダンデザイン』
千代田区立日比谷図書文化館
2018/06/08-08/07 (6/18,7/16休), 10:00-20:00 (土-19:00,日祝-17:00)

1910年代後半から1930年代前半にかけての日本のモダンなグラフィックデザインの展覧会。 杉浦 非水、竹下 夢二、小村 雪岱、古賀 春江、村山 知義など。 近年だと『描かれた大正モダンキッズ 婦人之友社「子供之友」原画展』 (板橋区立美術館, 2016) [鑑賞メモ] などあり、 それなりに観てきているので、新鮮に楽しめたという程ではありませんが、 やはりこの時代のグラフィックは好みです。 すっかり忘れていて、展覧会を観ている間は気付かなかったのですが、 大正イマジュリィ学会が協力しているということで、 『大正イマジュリィの世界 —— デザインとイラストレーションのモダーンズ』 (渋谷区立松濤美術館, 2010) [鑑賞メモ] と内容はかなりの被っていたのでしょうか。

最も目を引いたのは、やはり、1920年代後半の大阪松竹座のグラフィックデザイン。 特に『松竹座ニュース』はほとんどロシア構成主義デザイン。 実際にロシア構成主義デザインのポスターか出版物と思われるものをコラージュしたデザインもあったので、影響は直接的だったのでしょう。 そんな表紙に、戦前松竹映画でのタイアップでも知られるクラブ白粉の広告が一緒にコラージュされてるという所が、実に面白く感じました [関連する鑑賞メモ]。 現在の大阪松竹座は歌舞伎、新派や新喜劇を主に上演する劇場になっていますが、 当時は海外の演劇や舞踏の公演もあり、映画上映や音楽コンサートもあるホールだったとのことで、 モダンの最先端だったのだろう、と。 戦間期の大阪松竹座に焦点を当てた展覧会などあったら、観たいものです。

鷲田 清一 (編著) 『大正=歴史の踊り場とは何か』 (講談社選書メチエ, 2018) での「大正」もそうですが、 元号が大正の1910年代半ばから年号が昭和に改まって戦時色が強くなる1930年代半ば頃までをまとめて 「大正(モダン)」と呼ぶことが多いわけですが、 震災復興後のモダン都市東京などを「大正モダン」と呼ぶのは、やはり微妙に違和感を覚えます。 大阪松竹座も1923年オープンで、1925年には改元があるわけですし。 元号で社会が変わるわけでもなく、元号で呼ぶと日本一国史的な色が強くなりますし、 戦間期という元号に依存しない呼称の方がまだマシなのではないか、と感じることが少なくありません。