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Review: 小瀬村 真美 『幻画〜像(イメージ)の表皮』 @ 原美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/08/11
小瀬村 真美
『幻画〜像(イメージ)の表皮』
原美術館
2018/06/16-2018/09/02 (月休;7/16開;7/17), 11:00-17:00 (水11:00-20:00)

今年の2月に恵比寿 MA2 Gallery でのグループ展で観て気になった作家 [鑑賞メモ] の展覧会。 その時はベールを撮った写真作品だったが、 今回の展覧会はルネッサンス期の静物画や肖像画をに基づく作品が中心に構成されていた。 それも、ルネッサンス期の絵画を動かすことで異化してイデオロギーを表出させるシミュレーショニズムというより、 それを題材としたミニマリスティックな時間変化表現を追求した「液晶絵画」作品 (もしくは写真) だった。

静物画の構図どおりに実際の物を配置して、長期間に渡るインターバル撮影で写真アニメーション化した「黴」 (2003) など、 その「静物」が朽ちていく様など 『液晶絵画』展 (東京都写真美術館, 2008) で観た [鑑賞メモ] の Sam Taylor-Wood の “Still Life” (2001) や “Little Death” (2002) を思い出させるものがあった。 もしくは、静物画のように物を並べたテーブルの上に物を落とすとほぼ同時にテーブルクロスを引いてテーブル下に物を落とす様を高速度カメラで撮影し スローモーション化した “Drop Off” (2015) など、 Bill Viola [鑑賞メモ] の高速度カメラを使った静物画バージョンのよう。 ただ、インターバル撮影写真アニメーションと高速度カメラスローモーションが併置されたことで、 一見静止画に見えるようなミニマリスティックな時間変化表現の両側を見るような面白さになっていた。

2月にも観たベールから人物を消した写真シリーズ “Veil” (2011) や、 静物にかけた薄布をドレープの形を残して薄布だけオプジェ化した “Drape” シリーズ (2013-2014) にも、 彼女の拘りを感じたけれども、「黴」と “Drop Off” の対比ほどは印象は強く残らなかった。

原美術館の展示は写真撮影可能な場合が多く、併設のレストランも以前は撮影可能だったのですが、 今回行ったら撮影不可となっていました。 中庭も綺麗でいわゆる「インスタグラム映え」しそうな場所なだけに、撮影をする人も多く、それに伴いトラブルも多かったのでしょうか。 それ自体は仕方ないかとは思うのですが、 今まで観に行く度に展覧会のイメージケーキを写真に記録してきたので、それができなくなってしまったのは、少々残念。