2015年の『幻想絶佳 ― アール・デコと古典主義』展 [鑑賞メモ] に続く、 フランスにおけるアール・デコのイメージの着想元を探る展覧会第二弾。今回は絵エクソティシズム (異国趣味) というの観点から。 似たような観点の展覧会というと、『ようこそ日本へ:1920‐30年代のツーリズムとデザイン』 (東京国立近代美術館, 2016) が興味深く楽しめましたし、 [鑑賞メモ] 東京都庭園美術館は19世紀から戦間期にかけてのモダンなデザインの展覧会を得意としているので、期待していた展覧会でした。 そんな期待が大きすぎたか、少々物足りなく感じられてしまいました。
本館を会場とした前半は、モードや装飾におけるエクソティシズムを、戦間期だけでなく第一次世界大戦前夜の時期まで広く取って概観するよう。 新館を会場とした後半は、1セクションを L'Exposition Coloniale Internationale de Paris 1931 (1931年パリ植民地博覧会) に充て焦点を当てたような展覧会でした。 この植民地博覧会に関する展示を期待していたのですが、展覧会の様子がわかるような展示が薄かったのは残念。 「§4 異郷の再発見」に植民地の人々を描いた絵が多く出ていたのですが、 それらの多くが Musée des Années 30 (30年代美術館) のコレクションで、 1930年代という微妙な時期 (戦間期といっても狂乱の1920年代ではなく大恐慌後の不穏な時代) を テーマにした博物館があったのかと。 展示されていた物よりも、そんなことに興味が引かれてしまいました。
最後の展示室では関連プログラムとして、 この展覧会のために委嘱されたという Mounir Fatmi による映像作品 Human Factor (2018) が上映されていました。 映画 L'Inhumaine (Marcel L'Herbier (regie), 1924; 『人でなしの女』) [鑑賞メモ] を解体して、 1931年パリ植民地博覧会や当時のアール・デコに関するアーカイヴ資料をコラージュしたような映像でした。 しかし、そもそも元になった映画『人でなしの女』や1931年パリ植民地博覧会のアーカイブ資料といったものはなかなか観る機会が無い物ですし、 オリジナルをズタズタにした映像作品など不要とまでは言いませんが、まずは元の映画や資料をちゃんと上映して欲しかったです。