アニュアルで開催されている新進若手の作家を紹介するグループ展です。 性的なマイノリティのアイデンティティなどをテーマにした 形式的な作風というよりもスナップショット風の私的な写真に一手加えたような作風の写真が多く、 正直に言えば好みの展覧会ではありませんでした。 しかし、ミヤギフトシの展示などを観いて、 例えば Bill Viola のような高精細のくっきりした絵画的な動画でなくとも [観賞メモ]、 むしろ「私写真」に近い暗く荒れ画面でも、「液晶絵画」 [観賞メモ] は有り得ると気付けたのは、収穫でした。
イギリス出身で現在は米国西海岸シアトルを拠点に活動する写真家 Michael Kenna の 1970年代来の写真を振り返る展覧会です。 人物を写し込まない白黒の風景写真がメインの作風です。 風景写真といっても、 「サイトグラフィックス」 [観賞メモ] 的な写真に 多く見られるパンフォーカスでくっきり描くようなものではなく、 霧なども使ったソフトで奥行きと間合いのある画面です。 抽象的な絵画を描くような画面の切り取り方や、 カメラを地面近くに据えての遠近短縮法的な視点使いなど、モダンな画面作りながら、 そのソフトさがピクトリアル的に感じる時もあったのが、面白かったです。 1980年代末からアスペクト比1:1の正方形写真がメインになるのですが、 静謐で抽象的な作風といい、レコード/CDのジャケットにうってつけです。 コマーシャルな仕事もしている写真家ですが、自動車の広告が多かったのは意外でした。 ナチス強制収用所を撮った Imposible to Forget: The Nazi Camps Fifty Years After 1989-2000 でもその作風は変わりませんが、 日本で撮影している女性のヌード写真シリーズ RAFU: Japanese Nude Studies 2008-2018 は それまでの風景写真とは違った作風への試行錯誤もあるのでしょうか。 あと、落ち着いた雰囲気の作風の写真なのに、会場に掲示されていた写真家自身による挨拶文では撮影の過酷さが語られていて、そのギャップが少々面白く思われました。