イギリス・ロンドンのコンテンポラリーダンスの拠点として知られる Sadler's Wells も Digital Stage と題してCOVID-19隔離への対応としてのストリーミングをしています。 そんな中から4月25日晩にこれを観て観ました。
The Royal Ballet の principal ballerina、Natalia Osipova をフィーチャーした Sadler's Wells の制作による作品の映像から構成した、仮想のトリプルビルです。 Pure Dance と題した2018年初演、2019年リバイバルの公演から Valse Triste と Ave Maria、 そしてその間に、2016年初演の Qutb を挟んだ構成です。
Alexei Ratmansky の Valse Triste はクラシカルな身体表現を身体能力でアップデートしたような抽象バレエ。 男女で踊りますが、ロマンチックな要素は控えめ。 フォーク的な要素はありませんでしたが、シンプルなワンピースドレスのような衣装もあって、 Ratmansky 振付の Russian Seasons [鑑賞メモ] から男女で踊る部分を抜き出したよう。
続く Sidi Larbi Cherkaoui の Qutb は バレエ的な要素を感じさせない。コンテンポラリーの作品。 コンセプトによると、自然災害の犠牲者、 Natalia Osipova が金星、James O'Hara が地球、Jason Kittelberger が火星も表しているとのことですが、そこまではピンと来ることはなく。 しかし、イスラム神秘主義 sufi の歌唱に合わせて絡み合うジェンダーを感じさせない3人の筋肉質の肉体が印象的でした。
最後の Yuka Oishi の Ave Maria は Schubert の有名な歌曲に合わせてのソロで、抽象的なバレエというより聖女を演じる独り芝居のよう。 Medusa [鑑賞メモ] の最後に見せたソロダンスにも近い尊さを感じました。
自分にとっては Medusa や Anastasia [鑑賞メモ] で見せたような、 内面に狂気というかトラウマや妄想などを抱えたようなキャラクタを演じる Osipova の印象が強いのですが、 それとはまた異なる三様の作品を踊り分ける Osipova の身体能力演技力はさすがと、改めて感じたトリプルビルでした。