ロンドンのコンテンポラリーダンスの拠点 Sadler's Wells のCOVID-19隔離対応ストリーミング Digital Stage で現在公開中のこの作品を観ました。
キプロス出身のトルコ系で現在はイギリスを拠点に現代アートの文脈でも活動するファッション・デザイナー Hussain Chalayan の初のダンス作品です。 Chalayan についてはアート作品は国際企画展の中で何回か観たことがある程度で その作風が強く印象に残っているという程では無かったのですが、 Sidi Larbi Cherkaoui [関連する鑑賞メモ] とのコラボレーションの多いベルギーのダンサー/振付家 Damien Jalet [関連する鑑賞メモ] の振付ということで、観てみました。
ナラティヴというか物語性のある展開はなく、 服や布に着想した動きの短いスケッチをつなげた約1時間15分の作品です。 ファッションショーのように服を見せる際にダンスで演出するような舞台ではなく、 造形的な服から動きを着想したり、面白い動きになるような服を造形したり、と、 服の造形とダンスのインタラクションが期待以上に楽しめました。 天井から垂らした十数本のロープのような道具やプロジェクションマッピングなども使いましたが、 それも控えめに服の造形と動きに焦点を当てたミニマリスティックな演出も良かった。 しかし、短いスケッチが展開なしで短いスケッチが繋がっていくという全体構成は、 多様なアイデアを感じられたというより、ちょっと散漫で単調に感じられました。
伸縮性の素材で作られたレオタード風の衣装に長いループ状の幅広の伸縮性の帯を付け、 その帯のもう一方にもダンサーを絡めて引っ張り合うことで、造形的な面白さを作り出すところなど、 広報用のスチル写真に多用されるのも納得でしたが、 しかし、すぐに暗転して細かく場面を切っていくので、むしろ動きが乏しく感じられてしまいました。
造形、動きの両方の面白さという点では、 口が隠れるほどのネックの大きめのハードなショートコートのようなトップスを着た女性ダンサー3人が、 ボトムの白いシフォンのスカートをゆらゆら揺らすダンスの場面。 この場面に続いて、そこに黒のコートの男性2名女性1名のダンサーが加わり、 コートの上半を脱いで裏返すとスパンコールがついていて、それを煌かせながら旋回舞踊する場面への展開が、最も印象に残りました。