コペンハーゲン出身でベルリンを拠点とする Olafur Eliasson の個展です。 個展で観るのは金沢21世紀美術館 (2009-2010) [鑑賞メモ] 以来、10年ぶりです。
さすがに光の扱いが巧みで美しいインスタレーションが多い展覧会です。 複数の光源を床に並べて置いて鑑賞者の重なり合う影を鑑賞する Your happening, has happened, will happen (2020) や、 水を張った円形の浅い水槽に12の白色のスポットライトを当てて、 その反射で水の揺らめきを見せる Sometimes the river is the bridge (2020) など、 光の反射を使った作品が印象に残った展覧会でした。 こういう作品は静かに浸れるような環境ならより良いのでしょうが、少々観客の多い落ち着かない環境だったのは残念。 もちろん、ミストのカーテンに光を当てて虹を見せる Beauty (1993) のような作品も良いです。
しかし、Sunlight (2002) のようなインタラクティヴな作品では、 微妙なアトラクション感が出てしまうのは否めませんでした。 元々、気象現象に着想する作品を作ってきた作家だけに、近年の気象温暖化問題への問題意識があるのはわかるのですが、 二酸化炭素削減のために航空機を使わないでの移動のデータを作品化した Memories from the critical zone (Germany-Poland-Russia-China-Japan. nos. 1-12) (2020) は、 結局ノイズのようなデータであれば何でも良かったかのような表現になってしまっていて、造形的に微妙な仕上がりに感じてしまいました。
展示自体はドローイングを広く捉えてインスタレーション展示も含まれており、 ドローイングそれ自体の可能性を感じることはできませんでした。 しかし、切絵と手書き文字からなる Henri Matisse のアートブック Jazz のステンシル印刷がまとめて観られたのが、収穫でした。 タイトルはジャズですが、題材はサーカスから取られているといるというのも良いです。 ドローイングではなく立体のインスタレーションですが、 戸谷 成雄の荒削りの木材だけでなく、その削り屑が壁面に飛び散ったようなインスタレーションも良かったです。
パリとサンフランシスコを拠点とする現代美術基金 Kadist との共催によるグループ展です。 近現代史や社会問題に取材してドキュメントに近いものを緩く展示するような作品が集められてしまいました。 このような作風は現代美術な大きな流れになっているとは思いますが、 問題をもっと知りたいというフックが感じられる作品には出会えませんでした。
コレクション展示室は1月の 『MOTコレクション 第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ』 [鑑賞メモ] を一部展示換えしたものでした。 『百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-』 [鑑賞メモ] にも展示されていた 松江 泰治が2017年に木場や豊洲運河の界隈を パンフォーカス空撮写真や運河に沿って撮ったパノラマ写真展示されていました。 やはり、コンセプチャルに線や形に着目して抽象画を描くように撮られた写真が、自分の好みであると再認識。