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Review: 『百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-』 @ 東京都現代美術館 企画展示室 (美術展); 『MOTコレクション ただいま/はじめまして』 @ 東京都現代美術館 コレクション展示室 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2019/04/13
Weavers of Worlds –A Century of Flux in Japanese Modern / Contemporary Art–
東京都現代美術館 企画展示室
2019/03/29-2019/06/16 (月休;4/29,5/6開;5/7休), 10:00-18:00 (3/29 10:00-20:00).

2016年5月末から改修で休館していた東京都現代美術館が3月29日に再開したので、 リニューアル・オープン記念展を観てきました。 企画展は企画展示室の全フロアを使って、「編集」をキーワードに日本の近現代美術の100年を辿るというものです。 奇をてらった感の無い比較的オーソドックスな企画でしたが、展示の約1/3が戦前だったのが新鮮に感じられました。 この美術館で戦間期の美術をこれだけまとめて観たのは初めてかもしれません。

全14章構成でしたが、 最初の3階〜2階 (1章から4章前半) が1914年から紐解き始め太平洋戦争終戦まで、 続く1階 (4章後半から9章) が戦後の1970年代まで、 最後の地階が1980年代以降現在まで、という3部構成とも取れる構成でした。 第2部の1970年代までは10年単位くらいで細かく時代を追うように並べていましたが、 地階に入ると時代を分けずに作品が混在したような作品の並びになり、歴史の流れが止まったようでした。

藤牧 義夫 の1934年の隅田川絵巻 [鑑賞メモ] を久々に観ることができました。 同じ展示室には 恩地 孝四郎 [鑑賞メモ] らの戦間期モダン東京を捉えた版画作品も展示されていて、 自分の好みとも言えますが、この展覧会の中で最も楽しめた所でした。

展覧会の最後に展示されていたのは、松江 泰治 [鑑賞メモ] の最近2017年の写真作品でした。 東京都現代美術館のある木場周辺を南中時にパンフォーカスで空撮したお馴染みの写真シリーズの他に、 水路に面した長大な集合住宅などの風景を側面からパノラマで捉えた写真も展示していました。 松江 泰治 の写真を最近あまり観ておらず久々に楽しんだだけでなく、 このパノラマ写真が 藤牧 義夫 の隅田川の絵巻と符号しているように感じられたことも面白く感じました。 「編集」というキーワードにあまりマッチしなかったのか、展覧会全体として写真があまり選ばれていませんでした。 大辻 清司 のAPNの写真 [鑑賞メモ]、 杉本 博司 [鑑賞メモ]、 ホンマタカシ の「東京郊外」 [鑑賞メモ] と、 この 松江 泰治、くらいでしたでしょうか。

MOT Collection: Pleased to meet you. - New Aquisitions in recent years
東京都現代美術館 コレクション展示室
2019/03/29-2019/06/16 (月休;4/29,5/6開;5/7休), 10:00-18:00 (3/29 10:00-20:00).

東京都現代美術館は戦後美術を収集してきたわけですが、リニューアル・オープン企画展を観て ひょっとしてスコープ変えたのかと思いつつコレクション展を観たら、やっぱり戦後美術でした。 こちらは、日本現代美術史というよりここの作家に焦点を当てたような構成でした。

コレクション展の関連プロジェクトとして、サウンドアーティストとしても知られる 鈴木 昭男 による 『道草のすすめ-「点音(おとだて)」and “no zo mi”』 (2018-2019) という そこに立って耳を澄ませるための「エコーポイント」を美術館の各所に設置するインスタレーション作品があります。 このエコーポイントを巡るうちに、この美術館に来ることが、いかにルーチン化して、周囲の空間を気にかけなくなっていたかに、気付かされました。 建物の裏の空調の吹き出しなどの聞こえる音だけでなく、エコーポイントから見える景色も新鮮に感じられました。 空間を変容させずにミニマリスティックにインスタレーションされた作品を感覚を澄まして探し巡らせて周囲の環境を再発見させる作品はそれなりにありますが (例えば、内藤 礼 など [鑑賞メモ]、 これは音をキーとしているところも良く、楽しめました。