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Review: 『ピクチャレスク・ジャパン—世界が見た明治の日本—』 @ 国立映画アーカイブ (上映と講演)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2020/11/01
国立映画アーカイブ
2020/10/24 12:00-14:20
上映作品: 『日本の学童たち』 Japanese School Children (Hepworth Manufacturing Company (Britain), 1904, 2min), 『日本の葬列』 A Japanese Funeral (Warwick Trading Company (Britain), 1904, 2min), 『日本の祭列』 Japanese Procession of State (Hepworth Manufacturing Company (Britain), 1904, 1min), 『日本の舞踊』 Japanese Dancers (unknown (Britain), 1905, 2min), 『保津川の急流下り』 Shooting the Rapids on the River Ozu in Japan (Pathé Frères (France), 1907, 7min), 『ピクチャレスク・ジャパン』 Picturesque Japan [Japon Pittoresque/Das Malerische Japan] (Pathé Frères (France), 1907, 9min), 『日本の祭 横浜開港五十年祭』 Japanese Festival [Grande Fête du Cinquantenaire de Yokohama] (Pathé Frères (France), 1909, 6min), 『日本の稲刈り』 Rice Harvest in Japan [La Récolte du Riz au Japon/Reisernte in Japan/Auf Den Reisfeldern] (Pathé Frères (France), 1910, 8min), 『京都の祭』 The Rice Festival in Kyoto [La Fête du Riz à Kyoto, Japon / Reisfest in Kioto], (Pathé Frères (France), 1911, 8min), 『鵜飼』 Fishing with Cormorants. Isle of Yeso. Japan [Kormorane Beim Fischfang (Insel Yeso Japan)] (Charles Urban Trading Company (Britain), 1911, 10min), 『日本人の中で』 Among the Japanese (Selig Polyscope Company (America), 1911, 2min), 『日本のアイヌ』 The Ainus of Japan [Die Ainus, Die Im Aussterben Begriffene Urbevölkerung Japan’s] (Selig Polyscope Company (America), 1913, 3min), 『日本の軽業師』 Japanese Acrobats (unknown (Britain), 1914, 6min).
すべて British Film Institute 所蔵作品, デジタル修復版, 日本語・英語字幕つき; ピアノ伴奏: 柳下 美恵.
講演: 小松 弘 『初期映画における日本の映像について』, 平野 正裕 『「日本の祭 横浜開港五十年祭」について』, 森岡 健治 『「日本のアイヌ」の映像について』, 大島 幹雄 『「日本の軽業師」の映像について』

10月27日はユネスコ「世界視聴覚遺産の日」で、国立映画アーカイブは国立近代美術館フィルムセンター時代からこの時期に記念特別イベントを開催しています。 今年は British Film Institute 所蔵映画の中から20世紀初頭に日本で、もしくは、海外の日本人を撮影した映画の特集したもので、 映画が合計約1時間分、映画に関連する講演が1人あたり15分というプログラムでした。 企画自体はCOVID-19流行以前に立てられたもので、COVID-19の影響でフィルム輸送が困難となり 上映映画も変更になり全てデジタルデータによる上映、講演も1人15分と大幅に短縮したとのことでした。

フィルムセンター時代、国内外で発掘された初期の日本映画の上映会 『発掘された映画たち』が数年おきに開催されているわけですが [2008年の鑑賞メモ, 2014年の鑑賞メモ] そのヴァリエーションのようでもありますが、題材の選択がジャポニズム的というか、観光的という意味では、 Mirror To The Soul: Music, Culture and Identity in the Caribbean 1920-1972 [鑑賞メモ] の日本版のようでもありました。

今回は、ピアノ生伴奏付きで観ることができたので、資料的な興味以上に映像を楽しめたように思います。 時代が下るにつれて映像の質が良くなるということもありますが、 やはり、興味を引かれたのは、平取コタンで撮影されたという『日本のアイヌ』。 「アンナホーレ (鳥の舞)」などの踊りが予想以上に生き生きとした動きの映像で残っていて、 これでサイレントではなく録音が残っていたら、と。 もう一つ、イギリスで撮影されたという日本のサーカス芸人を捉えた『日本の軽業師』も、 画質がくっきりしていて、その動きの良さがはっきりとした視野で楽しめました。

講演が駆け足だったのは残念な限りでしたが、その中、 『初期映画における日本の映像について』で、今回上映されたような映画が当時の写真絵葉書の映画版のようなもので、 画面の作りも写真における絵画主義 (Pictrialism) に対応するという話が、腑に落ちました。 サイレント期の小津の映画と新興写真の類似か、 Russian Avant-Garde の映画と写真の類似など、 戦間期の写真と映画のモダニズムの共通性は意識したことがありましたが、 第一次世界大戦前の写真と映画についてはほとんど意識に上ってなかったので、 今後はそこももっと意識して観たいものです。